Dios
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前職・ぼくのりりっくのぼうよみのたなか、YouTube登録者数170万人超えの今最も注目すべき世界的ギタリスト・Ichika Nito、ボカロやオンライン・ゲーム界隈ともリンクし、ぼくりり過去作も手掛けたトラックメイカー / シンガーソングライター・ササノマリイで新たに結成されたバンド。たなかの好きな漫画『ジョジョの奇妙な冒険 Part7 スティール・ボール・ラン』の登場人物・Dioと、ギリシャ神話における陶酔や酩酊を司る神ディオニュソスを掛けて名付けられている。
たなか、Ichika Nito、ササノマリイ。個の実力がすでに高い評価を得る3人が組んだこのバンドは、Diosと名付けられた。音楽特有の一回性や祝祭性を生むべく、実験的に制作を続ける彼らを、ファーストアルバム完成前にしてVI/NYLがカバー&巻頭特集。様々なピースがはまり、大爆発を起こす直前……そのプロローグのような瞬間をパッケージすべく、時にコミカルに、時にシリアスに切り込んだ大ボリュームインタビュー。
ーまずは人となりが垣間見えるようなところからお聞ききしていこうと思います。どのような子供でしたか?
TANAKA 鼻持ちならない……?
ICHIKA 自分で言う?(笑)
TANAKA うん、そう思うなー(笑)
ICHIKA 僕は結構、自由奔放な子でしたね。
SASANO (僕は)とてもとても、おとなしい子供でした。
TANAKA おとなしそうー!
ICHIKA わかるわ。
ーその頃と今と、変わったなと思うところはありますか?
ICHIKA 僕はあまり変わってないですね。すくすく自由に、今まで来てますね(笑)
SASANO ササノはだいぶ変わりましたけど……。根暗な部分は変わってないですね。それ以外は人の目を見てしゃべるようになって、口を開けて笑えるようになったとか。高校に入って、吹奏楽部に入ってから人格から叩き直されました(笑) ずーっとトロンボーンを吹いてました。
ー他の二人の部活は?
ICHIKA 僕はわりとずっと柔道と空手をやってました。武道少年でしたね。なので、楽器に関しては部活に入らずに練習していたという感じです。
SASANO (柔道の)大会とか出たの?
ICHIKA もちろんもちろん。当時大阪だったんですけど、大阪府内で何位~みたいな感じではありました。
ーすごいですね。その当時は、努力してる時間はどちらかというとそっち(柔道)の方が長い?
ICHIKA いや、1:1くらいですかね。同じくらいの割合で楽器も武道も頑張ってました。ただ、中学は3年間柔道部にいて、高校も当然柔道部と思って入ったんですけど。1年経ったくらいで突然顧問の先生がセクハラで高校をクビになってしまいまして……新聞に載るレベルの問題になり。その次の日くらいから、学級主任の人に「お前頑張ってきたけど、柔道部は今日から廃部やわ。ごめんな」と言われて(笑) そこから僕は路頭に迷い……そのまま帰宅部になりましたね。当時軽音部が唯一あったんですけど、軽音部の連中とは仲が悪く(笑) 入ることもできなかったので。家で一人黙々と弾いてた……ギター少年という感じです。
ーたなかさんは?
TANAKA 僕はバスケ部に入って1日で速攻で辞めるみたいな男でしたね(笑)。
ICHIKA 最短辞め男(笑)。
TANAKA 周りで結構話題になってたらしい。職員室とかで、なんか1日で辞めたやつがいるらしい……と。
ICHIKA 今までなかったんだね、そういうことが。
TANAKA まあ、あんまりないんじゃない? (僕は)なんか行きたくなくなっちゃって。知らん人いっぱいいて、集団怖……て感じですかね。
ー昔と比べて自分が変わったと思う部分はありますか?
TANAKA (変わった部分でいうと)メンタリティとして、自由度がすごく上がったなーと思いますね。子供の頃からわりとずっと制約をかけていた感はあったので。変わったというか、変えたという感じですね、自発的に。
ーそのきっかけは?
TANAKA まあ「ぼくりり」(※ぼくのりりっくのぼうよみ)を終わらせた時ですかね。子供の頃から(ぼくりりを辞めるまで)ずっとあった部分が、辞めてから無くなった。
ー逆に、その頃から変わらない部分は何かありますか?
TANAKA 「謎の自信」みたいなものはずっとあるかもしれないですね。でもなんだろう、投げやり? な感じもありますね。
ICHIKA 僕は夢見がちなところが、子供の頃から今までずっとあって。「そんなことできないんじゃないの?」って思われるようなことを追求する部分がずっとあったし、それは今でもそうですね。例えば、僕は「不老不死」になりたくて、大学は生命科学を専攻したんですけど。本気でそれ(不老不死)ができると思って専攻してたんですよ。音楽に対しても、音楽というものの科学では表せないような領域? に触れられると思って、信じて愚直に技術を高めてたりとか、知識を付けてたりとか……。そういった努力をしているという節がありますね。昔の人ができなくても、先人の知識の蓄積に自分が乗っかったらいけるんじゃ? みたいに思ってます。
ー音楽を始めたきっかけについても教えてください。
SASANO 本当の最初でいうと、物心つく前、テープを録音して再生できる子供向けのおもちゃ「My First Sony」っていう赤・黄色・青! みたいな配色のやつがあって。僕はそれで色んな音を録音するのが好きだったっていう。それで色々録ってて、テレビで流れてていいなと思った曲を録音したり。そこで、あるアニメのED曲を聞いた瞬間に「うわ、なんだこれ」となって。それを再現したくて(音を作り始めた)。それまでも、鍵盤とかで遊ぶのは好きだったんですけど、その曲をどうにか再現したいっていうことでコードの弾き方を試行錯誤したのが「作曲」っていうものの始まりだったのかもしれないです。4歳くらいからずっと触ってはいたんですけど、実際作曲するに至ったのは小4・小5とかですね。その間に、GAMEBOYのポケットカメラっていうものの中にシーケンサーのミニゲームみたいなものがあって。それで打ち込みごっこをやってました。一人遊びが上手だったんだと思います。友達も、今も昔もずっと少なかったので。そういうのに没頭しがちだった。
ICHIKA 僕は、おばあちゃんがピアノをやっていて、3歳くらいの時に教えてもらって……なので、ピアノから入ったんですけど。そこから、そんなめちゃくちゃ弾くとかではなく、中学くらいまではたまに弾く、みたいな感じですね。あとは、お父さんがエレキギターでベースをやっていて。14、5歳くらいの時に父の部屋でIron Maidenがかかってるのを聴いて、どハマりして。そこからベースを弾き始めたっていうのが、弦楽器の始まりですかね。それで、もう少しベースよりも複雑なことをしてみたいなと思って、だんだんとギターの方に。
TANAKA 僕は「ニコニコ動画」からですかね。あんまり幼少期に楽器やってたとかないですし。本当たまたま、動画サイト内のラップを作って投稿するっていう。自分で作り始めたのが14、5歳とかですかね。そこまでは本当にもうリスナーというか。当時、周りのみんながやってたので、自分もやりやすかったっていう感じなので……。あんまり2人みたいに黙々とこう、一人で熱中するみたいな感じでは全くなかったですね。
ー音楽的なバランス感覚はどう身に付けていったんですか?
TANAKA なんですかね。ラップを聴いて育ってないのに、ラップをしようとするというところから始まったというのが一番大きいのかなと思っていて。あの形態って、自由度がすごく高いというか。一編通してボーカルが存在してれば「ラップ」です、そこに必ずしもメロディーは必要としないし、必ずしも繰り返しは必要としないし、みたいな……とにかく自由度が高い。最初は他の人の表現の仕方を見て「あ、このゲームはここまで許されるんだな」みたいなのを色々収集して、自分なりにそれをやってみたり。
ー読書はよくされてましたか?
TANAKA はい。物理的には読んでましたね。言葉がめちゃ好きだったので……。
ーそもそも言葉を大切にしていたから、その表現をラップにしただけという感覚ですかね?
TANAKA そうですね、でも、語彙というか、言葉の使い方自体は自分の中で蓄積されてて、それをアウトプットする場所がなかった。そこで初めて「あ、自分が思っていることをこういう風に書いていいんだ」みたいなものがあって面白かったですね。
ーラップ表現でアウトプットできたことが、初めからしっくりきたんですね。もともとインプットされて溜まってたものが、そのままつらつら出やすかったというか。
TANAKA 表現として非常に、歌よりも「口語的」というか。通常の会話をアップグレードしていくとちょっとラップになるみたいなのはあるじゃないですか(笑) 外国の方が喋ってるやつに。
ーポエトリーっぽくなるみたいな話ですよね?
TANAKA あ、そうですそうです。会話とか、しゃべることと地続きで、連動性があるなと。
ーではもし世界に音楽がなかったら、どうやって生きていたと思いますか?
SASANO 死んでましたね……(笑) 人生上で「逃げ場」であったし「救い」でもあったので。ない場合は、逃げ場がないので死んでいる……(笑)
一同:(笑)
TANAKA 重すぎるんだよなー(笑)
SASANO (笑)でも本当そうだなって思いますね。人生の主軸が音楽だなって思います。音楽によってコミュニケーションも取ってるし。例えば声をかけてくれる人も、僕が音楽をやっていると知っているから声をかけてくれて成り立ってるというか。そうじゃない人とコミュニケーションを取っているということが……ここ数年というか、ずっとない。
TANAKA (あるとしたら)病院の診察……とかだね、たぶんね。
SASANO 本当そう……で、新しい人とコミュニケーションを取るたびに「実は音楽活動をしていて~」みたいな感じで自分からそこに話を振ってる。それ以外の、自分が与えられる価値を見いだせないみたいな……。(本当にこの世界に音楽がなかったら)それこそ小学校の低学年くらいで死んじゃってるんじゃないかな。まず、3年生か4年生くらいの時に、担任の先生に「リコーダー上手だね」って言われて音楽真面目にやろうって思ったので。
ICHIKA 僕は(前述の)研究にたぶん行ってたと思います。興味の対象がめちゃめちゃあるので。それこそ、スポーツにハマってるかもしれないし、柔道が廃部になってなかったら続けてたかもしれないし、それはそれでたぶん、楽しかっただろうし。その人生もやってみたいですね。興味のある物事、幸せの種みたいなものがそこら辺に転がってて、それを手当たり次第……(笑)
TANAKA 音楽やってなかったら、わりと色んなことに浅いレイヤーで取り組めてたかなと思います。マネーゲームとか、そっちの方に行ってそうだなと。なんか、話しててもちょっとつまんないタイプの人間になってそう……わかんないけど(笑)
ー特にお二人は、他にも没頭できそうなものがありそうですが、音楽の魅力はどういうところにあると思いますか?
ICHIKA 僕はあくまで、作曲家ではなく演奏して音楽を伝えたいと思っているので、音楽は自分のやってる行為とダイレクトに「即興性」があるというか、そこに繋がってリアルタイムで情報がパスされる。一方的なものなんですけど、それがすごく魅力的だし、できることに無限の可能性がある。自分が全部の責任を負えるものが一番追求できる、おいしいものだなって。そこに他の人間の入る余地とかがあったりすると、コントロールできないことがあって、わからないことが多すぎて、どれだけの時間があってもわからないことだらけで、自分が満足できることに達するのは難しいんです。そこが研究とかと違うところ……まあ、似てるところでもあるかもしれないですけど。特にギターの場合が本当にそうなんですけど、一音に込める情報量がめちゃめちゃ多くて。例えばピアノは鍵盤を押す強弱、他の音と一緒に鳴らす時の余韻の響き方とかの細かいところはあるんですけど、まあざっくり言うと音の強弱じゃないですか。ギターは、その音の強弱に加えて、ビブラートのやり方一つをとっても、弦の弾き方……指でなのか、ピックを使うにしてもどの材質のものを使うのかで全然違うし。エフェクター一つでもすごく変わるし、アンプルもですし。
ー組み合わせを考えると、ものすごいパターンがありますよね。
ICHIKA もう、そうなんです。1つの音だけで、それだけの可能性があって、それを縦に配置するとハーモニー、噛み合わせになって、横に配置してくとメロディーになる。このシンプルなハーモニーとメロディーの組み合わせっていう部分でも膨大なパターンがある。それにリズムとか空間だったり、相手の心理状況などの要因が(影響して)多次元的な層になってて。宇宙みたいなもんだなってのは常に感じています。僕、星とかもめっちゃ好きで、宇宙はめちゃめちゃロマンを感じて大好きなんで、本当近いものを感じますね。
ーしかも自分の感覚もアウトプットできて……ですもんね。
ICHIKA そうです。地球外生命体、たぶんいるんだけど、いることは人間に証明できないみたいな。音楽だからこそできることもあるんだろうけど、証明できた人はいないんだろうし。でも自分がまだ行き届く可能性はあるし、まだ宇宙開発をやるよりは可能性があるだろと。不老不死の研究するよりもまだ可能性がある。あと、偶然による作用がかなり大きいと思ってて。だから、バンドっていう偶然が生まれやすい環境に身を置いているというか。
ー一人ではなく、バンドという形態になることでさらに多次元になりますね。
ICHIKA そうですよね。多次元になって、解を見つけるという意味ではより難しくなるんですけど。偶然それに辿りつく可能性は、一人でやるよりも圧倒的に増えると思いますね、確率が上がるかもしれないと。もしかしたらグッと下がってるかもしれないけど(笑) バンドの場合だと「偶然」が生まれてっていう魅力があって、すごい長い時間同じ人間といることで、すごいことができるんじゃないかって楽しみもあって今やってるんですけど……。今までは基本的にソロでやってきたので。そういう意味でいうと、全て自分でコントロールできて、なおかつ相手の心だったり魂を動かせる手段が音楽なのかな、そういう特別なものだなと思っています。
TANAKA 自分はあくまでフィルターでしかないな、レンズでしかないなってのはすごい思っていて。他のことがあるからこそ、自分の言葉に意味が生まれるというか。特に僕は歌うので。歌ってちょっと肉体的な部分、その人の色んな人生が乗っかるじゃないですか。「あ」とか言うだけでも、そういうの色々わかっちゃう。そこが音楽の良さかなと。そういう意味ではあんまり嘘つけないというか。
ー言葉を端に発するだけじゃなく音に乗せることで、よりフィジカルになるということですよね。
TANAKA そうですね。一回性が生まれるというか。そこは、Diosっていうバンド名の由来でもちょっとあって。ギリシャ神話にディオニュソス神っていうのがいるんですけど、祝祭とか酩酊とかを司る神で。そういう音楽特有の「一回性」「祝祭性」みたいなものをDiosとしてには大事にしていきたいっていうのが……あるよね?
ー制作におけるインスピレーションは、それぞれどんなところから受けるのでしょうか?
SASANO 僕は、絵画とか風景、美術作品とか。あとは実体験。
ICHIKA 僕はそれこそなんでもあるんですけど、一番大きいのは音楽を聴くことです。特に気にしてるのが、連想・発想・ひらめきとかが一番筋肉にしづらいというか、鍛えても付きにくい筋肉だなということを思っているので、意識的に鍛えようとしてます。全然自分が興味関心ない分野のことを、暇だったら積極的にしようと思ってるので。例えば、雑誌の創刊号とか出ると、結構それは買ってて。創刊号って一番力が入ってるじゃないですか。あとは、ラジオとか全然興味ないけど、ラジオが作れる本とか売ってたら、とりあえず買ってみようかなって。本当に、普通に音楽をやってるだけだったら全く通らなかったようなことに積極的に触れようと。その中でわりと半分以上は、実際何もないことが多いんですけど、でも残りの半分くらいは、けっこうリアルタイムで役立つようなひらめきがあったりするし、その発想を応用できたり。もしかしたら、今は役に立たないと思ってる半分以上も、これからの人生で絶対生きてくることはたぶんあるんだろうなと。自分の人生豊かになるし、結局人生が豊かになると、音楽も豊かになるなって。相互的に良くなるなと。
TANAKA 幸せだな(笑) 僕は、人間からスタートすることが多いかもしれないですね。
ICHIKA だね。
ーまず人への興味ということでしょうか?
TANAKA そうですね。すごい漠然とした。感情って人の中に複数存在していて、それを行動とか表情とかにアウトプットするわけじゃないですか。その微妙な色とかを見るのが楽しいし、すごくインスピレーションになる。
ーけっこう繊細な機微というか、人間のそういう部分までを感じ取りたいんですね。
TANAKA そうですね。そこが見えてしまうのが、一番面白いかなと。
ーその感覚で街や人を見ると、至る所にそういう人の機微みたいなものが溢れてますよね。
TANAKA そうなんですよね。だからそういう視点で世の中を見ると、もうお茶してるだけで楽しいし。特に、その人が隠したいけど、隠せないものほどモロバレだし、それが美しいと感じるんです。
ICHIKA 麻布の深夜のカフェとかもう絶対楽しいよね。
TANAKA やっぱりコンプレックスに一番美しさを感じるんですよ。自分にもそういう部分はあるし、みんなあるからわかる。僕は人間の細かい行動から伺える背景っていうものに一番、美しさを感じるんです。どの服を選ぶかとか、どういう髪型にするのかとか、そういうところにも感情は出てくる、隠せないんですよね。どんな服を着るのかという小さな選択が、明らかに決定的な印象をこちらに与えてしまう……すげーシビアな世界だなと。
ICHIKA でもさ、そういうの精神医学の方ではめっちゃあるよ。10種体型とかで全部表すことができるんだよね。
ーそれら全てが、楽曲作りにも生きてきているということですね。
TANAKA 生きてますね。『鬼よ』とか。まさにそういうことを基に作った曲。
SASANO 表現者って何かしら偏りがあるから、表現が生まれる。あの人は自分と違うなっていう考えが生まれないと、創作って生まれないと思うんですよね。だから、僕なんかは……最近は少し頑張ってますけど、ほぼ感覚で作ってます。計算で作るのはね……完全に感性でゴリ推したやつよりは、面白くないな感はありますよね。
ー理屈上正解だとしても、何か違うのでしょうか。
SASANO 理屈でしゃべってる感が面白くない、みたいなね。それよりは感性で……ていう方が、僕は(話を)聞くのも好きです。この人はこれが好きなんだなっていうことが伝わってくる。
ーじゃあ、自分の生っぽいところを出すのも好きなんですか?
SASANO そうですね。僕はそっちの方が好きで。どうしても、お仕事としていただいた楽曲は考えて作らないといけなくなる。その感覚で自分の曲として作るって、ものすごく困難なんですね。それを誰か他の人が歌うとなった時に、ものすごい簡単に作れる。別の人が表現するってなった時点で、たぶん脳の回路が違うんですよね。その人が一番活きる形とか、僕はその提供する人とか媒体や作品を、愛せないものに関しては作れない。ありがたいことに、自分がこれまで関わってきたものは好きなものだったので、できるのが早い。バンドの曲だともう、1日で作ったり。でも自分の曲になると本当に、歌詞とかを作るのだけで、1~2カ月、3カ月とか……。
ーそんなに差が出るんですね。自分を通す方が、より困難になってしまう?
SASANO たぶん、脳で考えてしまうんですよ。自分の等身大みたいなやつを出さなきゃいけないから。自分は、こういうことを歌っていい人間なのか? みたいな考え方。だいたいみんなに「考え過ぎ」って言われますね(笑) 考え過ぎなのはわかってるんですけどね……でも、簡単には直せない。今年になってそれがようやく瓦解してきた感はあるかなと。
ICHIKA でも、だからこそササノオリジナルサウンドではあるんだけどね。
SASANO 偏屈なんです。本当にもう、わがままで。
ICHIKA 普通、そこまで考えないもん。
SASANO 僕がいいと思うものは、こういうものなんです。
ーそれこそ、Diosの活動がいい影響に働いている。
SASANO 本当にそうなんです。Dios始めてから、本当に自分の曲をちゃんと作るようになった。相乗効果がすごい、本当に。今年一番ちゃんと仕事してるんじゃないか?
ーそれぞれ、影響を受けた作品はありますか? それは音楽でも絵画でも何でも。
TANAKA 僕は、Gustav Klimtはたまたま友達が薦めてくれて、画集買ってから結構パラパラ観てて。すげー好きなんですよね。なんかいいです。「この黒い丸でなんでこの目の奥が書けるんだ、ただの黒い点々じゃねえか!」みたいな。ある種の……もはや憤りみたいな(笑)「なんでこんなんできるねん!」みたいな。
ー圧倒的技術に憤るようなことはありますよね(笑) もっと幼い頃に影響を受けたものってあります?
TANAKA 音楽は……EGO-WRAPPIN’とかUAとかずーっと家で流れてたので。影響を受けるというよりは、表現のベースみたいになってますね。好きとか嫌いとかではなく。
ICHIKA 僕は、幼少期にピアノを弾いてた時に、Bill Evansの「Waltz for Debby」が、初めて音楽で刺さった曲で。幼少期って悲しい経験とか特になかったりするじゃないですか、経験値的に。でも、その時に聴いて「切ない曲」っていう印象だったんです。結構今、悲しい曲を作ろうと思ったり、自分が特に悲しい曲を聴いた時って、自分のそういう追体験なんですよ大体。例えば卒業の曲聴くと自分が卒業した時のこと考えるし、映画の切ない別れのシーンが連想されたりする。何かが関連付けられて、引っ張られて悲しいっていう感情が生まれる。でも、そういう意味では、幼い頃に聴いた「Waltz for Debby」ってそういうものではなく、無からの感情というか、DNAレベルである、感情を想起される……みたいな。あ、これ……これだ。俺はこれを作りたいんだ! 演奏したいんだっていうのを(思いました)。この感情の生まれ方を再現したい。追体験でなんとなく引っ張ってきた感情じゃなく、根源から引き起こす感情、みたいなもの。
SASANO 僕が最初に鍵盤にのめり込むきっかけになったのは、新居昭乃さんの「覚醒都市」っていう曲。アニメのエンディング曲だったんですけど、本当に僕にとっての音楽の初恋……。全部を持ってかれたというか、何かに意識を持ってかれるというか、夢中になったのはそれが初めてだった。流れた瞬間から曲が終わるまで、言葉で表すと「聴き入る」なんですけど、聴き入るっていう表現じゃ浅すぎるっていうか。その曲そのものの中に、世界があるというか。その世界に溺れられたもの。その後色んな曲を知っていった中で言うのであれば、Sigur Rós。作っている音楽の中に世界を持っている、そこに連れていってもらえるというか。そこに居させてもらえるというか。そういう音楽こそが、自分の中で音楽としての「気持ち」がある。それが自分でもできたら一番いいよなって、ずっとそういう気持ちでやってますね。言葉で表される消費音楽? だったり、ダンスミュージックもめちゃくちゃ大好きなんですけど。ダンスミュージックも、場の空間を支配できるという点で同じ作用があるので、やっぱりそういう居場所を作っていきたいですね。
ーでは、ここからはすごくライトな質問もしていきたいと思います。 自分を動物に例えたら?
TANAKA 猫とかじゃないですか。
ICHIKA 無難なとこいったねー。
TANAKA いやでも、まじ。
ーどんな猫?
TANAKA どんな猫……? でも、結構オーソドックスな猫なんじゃないですか? フラフラして、興味ある時は「こんにちはー」て感じなのに興味無くなるとすぐ、帰る。ずーっと人のこと見てるって感じですね。イチカは?
ICHIKA なんやろ? 逆になんやと思う?
TANAKA イチカは、えー……。
ICHIKA たぶん、質問の意図とは違うんですけど、単純に顔面がポケモンのジュカインに似てると思います。
一同:(笑)
ー質問の意図とはだいぶ違いますね(笑)
TANAKA エメラルドね(笑)
ICHIKA はい、草タイプの最終進化系のジュカインっていうのがいるんですけど、それに似てるってよく言われますね。
TANAKA それいつ?
ICHIKA わりと、高校の時とか。大学も(笑)
TANAKA なんか新しいジュカインもいるんだけど。
ICHIKA そっちじゃない方。進化してない方(笑) なんか、首長い感じとか、なで肩の感じとか、ルックスがジュカインに似てるって言われます。
TANAKA それでいうと、動物的にはクマとかじゃない? クマっぽい……。
SASANO 僕は、ストイックに自分から何かを見出してやるっていうところは、ものすごく、オランウータンとかそういうものを感じるよね。
ICHIKA 比較的、人に近い動物だね。
SASANO 勝手になんか、そうしてるけど……。ものの使い方教えなくても分かってる感じ。
ICHIKA じゃあ僕は間を取って、クマのプーさんですかね。単純に僕がめちゃめちゃ好きなんですけどね。
SASANO 最終的に非実在なんだね(笑)
ICHIKA ちょっとずる賢い、クマのプーさんみたいな。
TANAKA (イチカは)自分の命を自分で満たすみたいなのが、すごい得意な人ってイメージ。
ICHIKA あー、そうかもね。自給自足って感じ。だからよく、彼女とかできても、一人で生きられそうだからって理由で振られますね。私のこと必要としてないでしょって。
ー自己完結できすぎちゃってる。
ICHIKA そうですね。一番多いのがそれです。……おい、笑いすぎだろ!
TANAKA あははは(笑) だって、想像つきすぎてもう(笑)
ICHIKA 別に、二人の間に問題が無くても、そういうことを唐突に言われて、「えー?」ってなって、「わかった!」て(笑)
TANAKA そこで、わかったってなっちゃう(笑)
ーそういうとこやでってことですね。
ICHIKA そうなんでしょうね(笑)
TANAKA でも難しいよな。必要不可欠になりにくいよな。
SASANO ……(ササノは)蚕ですね。繭を作る蚕。だから、飼ってくれれば、餌とかくれれば、勝手に曲を作りますっていう。
ー与えられた空間の中で丁寧にやるという……(笑)
一同:(笑)
SASANO そうですね、蚕です。
TANAKA いつまでにこういうやつを……という感じで葉っぱでも渡しておけば……。
ICHIKA いい素材を出してくれるわけね(笑)
ーではそろそろ真面目な話も良いですか?(笑)。Diosとしてコアにある考え方というか、特にたなかさんは、ぼくりりの頃と今の違いみたいなところをお聞ききしたいなと思っていて。心境の変化や向き合い方みたいなところも含めていかがでしょうか。
TANAKA まぁ僕自身としてっていうのと、バンドとしてっていうのと、2つあるんですけど。自分自身としてはぼくりりが終わったことで、抱えていた呪いを解いたみたいな感じですね。それが終わって、すごくフラットに楽しくバンドやってるなぁというか。純粋に。バンドが成功するとかしないっていうのが、良い意味で自分の根本的な評価にあんまり直結しない。つまりこう、悪い意味で命がけにならないみたいな。そういう良さがすごいあるなって。まぁ本当に純粋に楽しいことをやれてるなという。
ー個人で活動していた時は、命そのものを差し出しているような感覚もあったのでしょうか。自分の本質とパフォーマンスが混同されたりもしたと思います。
TANAKA そうですね。非常に強固に結びつきましたね。まぁでも自分自身の問題なんですけど。表に立つことへの受け入れ方というか、覚悟だったり、自分自身の世界に対する見方みたいなところに、致命的な歪みみたいなのがありましたね。それを解除した。
ー根本的な仕組みの問題があったのかもしれないですね。実はこういうバンドという形態の方がより健全に音楽に向き合えたというか。
TANAKA それはあるかもしれないですね。
ーICHIKAさんはソロとバンドとの向き合い方に違いはありますか?
ICHIKA ありますね。それこそ、さっきもちょっと触れたように、ソロだと自分1人がスキルを作って、演奏の初めから結果が出るまで、全部1人なわけじゃないですか。バンドは3人とかでやるから、自分でコントロールできない要素が増えるけど、自分以外の2人が増えることで偶然と偶然の掛け合わせみたいなものが、一人でいるよりも圧倒的に増えるし、今の自分の技量じゃ圧倒的に届かないところに何かの偶然のショートカットで辿り着くことができるんじゃないかっていう可能性が輝いていて、それを目指したいなっていうのがありますね。飛距離も増えるし。
ーササノさんは、ソロ名義の時と気持ちの違いはありますか?
SASANO 気持ちで言うなら、両方とも全力っていう感じなんですけども……。自分の曲を作るっていうマインドの持ちようと、バンドの一員としてものを作る時の気持ちってやっぱり全然違ってて、それが相乗効果になって自分の作品もすごく作りやすくなったし、そこまで意識してるわけではないにしても、このバンドで作ってる歌で、自分が歌うっていうのはまだ想像できてない部分だったりはします。もしかしたらこっち(Dios)で歌う場面が出てくるかもしれないけど、それとは別物として、自分だけが歌うもの……自分が自分のためにというか、自分の作品として作るものじゃないっていう考えがあるだけで全然違ってくる。自分自身がやると、自分自身の歌唱力とかの技術などの制約がつきまとうところを、このバンドではそういう問題が何もないんですよ。ギターも俺が文句言えることは何もなければ、歌なんて……歌唱力もあるし歌詞も書ける人がいる中で。
TANAKA ウケる(笑)
ICHIKA なんか嬉しいな。
TANAKA ササノって話してると最終的に二人のこと褒めてくれるんだよね(笑)
ICHIKA ありがとうって思う(笑)
SASANO 僕にとっては、もう完全に、水を得た魚のように作らせていただくっていう感じなんで。もちろん、いい形に仕上げるっていう責任があるにしても、楽しいっていうのがまずあります。
ー色んなものを補ってもらうっていうのもあるし、より自分ができることに特化していくこともできますもんね。
SASANO 本当そうです。僕が思いつかないようなメロディーを書いてくれる。そういう自然的な化学反応をしているなって。今まで考え過ぎていた部分が、自分の中で可視化できた感じ。もっと楽しんでもらう形でどうするかっていう、純粋な思考になりやすい。
ーDiosは、このコロナ禍にスタートしていて、成り立ちがそこだと思うのですが、それに対してどう捉えていますか?
TANAKA まあ、不運なのかな。コロナの前から準備はしていて、でもちょうど発表したタイミングが、コロナだったっていう。たぶん、同時でしたね。
ICHIKA タイミングが悪かったよね(笑) 意図的に、コロナの最中に出そうぜって感じでは全然なく。
ー偶然世の中がこうなった。この状況下でも走り出したかった想いは強かったのかなと思いました。
TANAKA 単純に3人で曲を作っていて、これはそれぞれのソロでやってるものとは違う面白いことができるよねって、それぞれの形でそれぞれが確信していて……なので、早く出したい! みたいな感じでした。イチカが一番、しびれを切らしてた(笑) 「はよ出さん?」て言ってた(笑)
ICHIKA 「これ溜めてても、腐ってくだけやで」みたいな。まあその時作ったものが一番旬みたいなもんなんで。とかいいつつ、「劇場」とかは、昔に作ったやつなんですけど(笑)
SASANO ライブっていうところでの影響が大きくて。僕は、そういう影響を感じるのは、人のライブに行きたいってなったときだけなので。個人的な活動上では、わりと影響がないというか。それこそ、このコロナ禍になって、音楽の聴き方が変わった……音楽の聴くジャンルが変わった……というか、選択肢は増えたっていう。室内で聴く音楽っていう選択肢を取る人が多くなったっていうのがあって、個人的にはすごくやりやすい感じはありますね。
TANAKA 確かに。そう考えたら、ササノ的には結構追い風的な……。
ー自分たちの活動としての音楽との向き合い方はそんなに変わらなかったですか?
ICHIKA ぶっちゃけ、あんまり、変わってないですね。作って出すっていう……元々ライブやってたわけでもないし。
ーお三方ともに、ライブなどの活動をする前段階、曲を作ること自体に快感があったという風に受け取りました。
TANAKA でも僕はわりと、あの時期の音楽業界そのものの、コロナ禍に対する向き合い方だったり、社会から見た時の音楽の位置付けみたいなところに対して思うところがあったりして。Diosは結構、日本で頑張って売れるぞ! みたいな部分を念頭に始めたバンドではあるんですけど、売れた結果、辿り着くのがあそこなのか……? みたいなことは思いましたね。
ICHIKA なんか、意味ねえな、みたいな……。
TANAKA そこの定義みたいなゴールのような、なんとなく理想としてたみたいなものが……。
ICHIKA そこが憧れじゃなくなったじゃないけど……。
TANAKA なんやねんこれ、みたいな。
ICHIKA そういう意味では、もう出だしから方向転換してたみたいなところはありましたね。
TANAKA そうですね。だからどちらかというと、もう少し純度高く、いい曲をいっぱい作りたいみたいな方にシフト。
ICHIKA 本当にいいと思うものを3人で作ろうという方向に。
ー商業的な部分とはどうバランスを取っていますか?
SASANO それ自体が、結構僕の中での課題というか、向上したい部分ですね。いいものというと漠然としてますけど、まずいいものを作るっていうのが大前提でありつつ。それをより、多くの人に受け取りやすくする……例えばアレンジや、細かい最終調整だったりをこのバンドに対してはわりと僕が考えていくことになるのかなっていうのはありますね。でも、原石は、この二人のもとにあるからっていう……(笑)
ICHIKA 僕はあんまりそういうことは考えてないですね。僕は「ササノ任せた!」って感じ(笑)
ーなるほど。だからササノさんが、バランサーってことですね。
ICHIKA そうです。もう彼のバランス感覚で。
SASANO だから、今のところ僕の課題は、多くの人にいいねって言ってもらえたとして、いいね止まり……点数でつけるなら70点くらいなのかな……アベレージみたいな。音メインでやってきた人間でも、好きな音っていうのは偏ってるので、それがウケるとは限らないぞっていうのは自分でもわかってて。ただそれを、いかにいいものをより届けやすい形にして届けていくかっていうのを、今必死に(笑)
ーなるほど。では、アーティストのスタンスとしてみたいなところで言うとどうですか? ぼくりりの経験を踏まえても、偶像的な方がリスナーは熱狂しやすいのかなと感じますか?
TANAKA まあそこら辺は、単純にマーケティング的な手法の一つでしかなくて。人に何かを伝える時って、100%そのまま伝えられるわけじゃないじゃないですか。デフォルメが入って……そういう意味では、偶像から全く逃れることはできないので。何なら、偶像じゃない本当の自分っていうのは一体どこにいるんだっていうところすらあるので、「偶像」っていうワードはあまり重要ではない。
ICHIKA 俺は、それを抑える努力をずっとしてきてた。これはソロの話なんですが、めちゃめちゃ気にしてるポイントで。ファンには何も求めないし、ファンからの要求にも応えないっていう。だからコアファンっていうのは生まれてくるんですけど、極力抑えて、自分の楽曲や演奏にかかるバイアスをゼロにはできないけど、限りなくゼロに近付けたい。自分やアーティストとしての魅力は度外視でいてほしい。まあ、ぶっちゃけそれはほとんど難しいことなんですけど。でもやっぱり、聴いてくれる人を増やしたいから、都度都度バランスを取っていく作業をやってますね。
ーそういう意味では、Diosを偶像化する必要もないし、それは選択肢としてもないでしょうか?
ICHIKA Diosに関しては、結構たなかの歌詞にもよるよね。
TANAKA まあね。
ICHIKA そういう意図がないとしても、そう取られることがあるかもしれないし。
SASANO 特に意識することはなくっていう感じの現状ね。
ICHIKA それだけ強さのある歌詞、それだけいい歌詞を書くっていうことで!
TANAKA 急にどうした?(笑)
ーポップスとして入って……最後の落とし所みたいな感覚は、3人で共有されているのでしょうか?
TANAKA 結構、それぞれがそれぞれのところを担当しているので……。
ICHIKA だから、そこを強くしていったらもっと……この3人でできるいい曲がもっとできるんじゃないかなと。
TANAKA やり方が無数にあり過ぎて。
ー楽曲はストックが結構あるんですか?
ICHIKA 結構ありますね。
ーそれで、幅を取っていってる感じはありつつ、どこまで攻めていけるかな? みたいな……
ICHIKA 例えば昔作っていた曲っていうのはわりと似たようなもので作ってた部分があって。でも今は話し合いながら、新しいやり方がどんどん出てきてて。そういう意味では今のやり方で作った曲の方がいいかなと思いきや……でも昔の曲もめちゃいいなと思うよね(笑) たなかが歌詞とストーリーを作って、それで僕がギターを……その歌詞から連想してっていうのもありますし。
ーDiosはまだ実験段階でもある。
ICHIKA まだ、Diosの1%しかいいところが出てないので。
ーその仕組みごと変える面白さみたいなものを、今していると……。それは面白いですか?
TANAKA そうですね。面白いし、何かのきっかけ一瞬で、全部ばっと開けそうだなって。
ICHIKA これいいな、ってピンときたものはみんな同じく「やばい」ってなるから、そういう時は進みが早いですし。
SASANO 向いてる方向は同じというか近いんですけど、通ってきてる部分が全員違うっていう。だからわりと面白いことになるというか。同じ方向を見てるのに、曲の好みが全然違う。お互い、こういう曲好きなんだけど……って言い合う会があった時に、誰か一人全く刺さんないっていうことが(笑)
ーでも何か波長が合っている。背景も違う、この3人のバランスが面白いなと思います。
ICHIKA 音楽に限らずですからね、これは。趣味もです。
TANAKA さっきの細かい価値観の落差もえぐかったもんね。
ーそれぞれの価値観も全然違う中で、でもどこかでバランス良く合っている。
TANAKA で、仲いいよね。
ICHIKA そうですね。まあDiosの始まりも、どっちかというとそもそも僕ら2人(イチカ・たなか)は、アーティストとして出会ったわけではなく、友達の紹介で出会ってって感じだったので。
TANAKA 謎の女の人がいっぱいいるバーでね……。
ICHIKA そこで2人だけまごまごしながら……。
TANAKA なんだったんだろうね、あれ(笑)
ICHIKA 2人だけめっちゃつまんなそうにして……そこで親近感湧くよね。
ー各々、個人で活動してたからこそ、Diosになった時の新しい発見がすごく多いのでしょうか。それを今、体感しながら作り上げていってる段階にも見えます。本来一人で完結できる人たちが集まって、個々以外に外部の刺激が入ることで、「こういう風になるんだ」って、今まさに楽しみながら作り上げているという感じがします。
TANAKA 本当にそうですね。アレンジ自体は僕はできないので、毎回トラックメーカーを入れて、ぼくりりの時はやってたんですけど。その当時もササノといっしょにやることはあったけど、やっぱりその時とは違って、Diosである、3人で一つのグループであるという風になったことで、全然気持ちが変わっちゃう。これが仮に、イチカがいない2人のグループだったとしても変わったと思うし。複数人で、一つのDiosであるとなった瞬間に、決定的な意識が何か変わって、それは面白くもあり、難しくもありました。なので、バンドという形で、一番、速度が出るのはどうすればいいのか、非常に模索してて。それは、世に出してみて初めてわかったことですね。ただ、楽しくてしょうがないですね。
ーファーストアルバムのリリースはいつ頃をイメージされていますか?
ICHIKA 来年の夏までには……期待しててくださいっていう感じですね。
SASANO ちょっと余裕持ったな(笑)
ICHIKA (笑) 本当は、春頃とかって話してたんですけど……(笑) 夏までには、ということにしました。
TANAKA ちなみに、こすいんでね、こういうとこ(笑) ちゃっかりしてるんだよね。
SASANO 一応、ロードマップとしてはもう決まってて、出そうねって話はしてるんだけど、まあ夏頃までかなと……(笑)
ICHIKA まあでも、俺らは作り始めたら早いからな。
TANAKA そうだね。基本的に、作り始めたら1曲は1日でできてる。
ICHIKA 本当に最短でいうと、2日あればフルで完パケできる。個々の他のスケジュール無くしたら1週間で本当にできると思う。
SASANO わりかし、みんなスケジュールがね。
ICHIKA あ、でもそんなこと言ったらマネージャーが、「あ、1週間でいけるんだ」って思っちゃうから……。だめだ、そんなことないです。
TANAKA でもまじで、監禁してもらった方がいいかもしれん。
ICHIKA アミューズ側でもう、がっちりと、鬼教官になってもらった方がいいかもしれない。僕ら2人(イチカ・たなか)が自由人なので、本当に誰かが見てくれないとっていうのが……。
ーそこには、模索やトライを重ねた楽曲がたくさん入りそうですね。
ICHIKA 僕的にはササマリにもっと歌ってほしいなってのがありますけどね。
TANAKA 確かにね。
SASANO 今は本当コーラスしかやってないからね。
ICHIKA ツインボーカルくらいの勢いの曲やってみようよ。
TANAKA 最終的にはイチカも歌いたいって話してるよね。
SASANO いやでも、ここ(たなか・イチカ)と並べられるプレッシャーと来たらないよ……。現場力の差が違う。
TANAKA 現場力って何(笑)
SASANO 僕はシンガー・ソングライターとしてやってましたけど、元々はそんなに歌う人間じゃなかった。曲作りメインでやってた……。歌うスタイルも結構違いますし。
ICHIKA でも「逃避行」のサビのコーラスとか、やっぱ、ササマリしか思いつかないコーラスを簡単に作るし。
SASANO ありがと。
TANAKA じゃあ自分たちを追い込む意味でも、アルバムは春頃、3月末に出すってことに(笑)
ICHIKA 楽しみにしててください。
PHOTOGRAPHY : TOSHIO OHNO
STYLING : HARUNA AKA
HAIR : MIHO EMORI (KIKI INC)
MAKEUP : DASH
INTERVIEW : SADANORI UTSUNOMIYA
*このインタビューは2021年12月30日に発売されたVI/NYL #004のために実施されました。
■VI/NYL