EASY LIFE
Instagram:@easylife
イギリス・レスター出身、5人組オルタナティブ・バンド。マレー、サム、ルイス、オリバー、ジョーダンのそれぞれがマルチプレイヤーで、既存のUKバンドのイメージとは異なるヒップホップやジャズ、エレクトロニカ、アフロポップなどをジャンルレスにミックスするサウンドが特徴。毎年UKの勢いあるニューカマーをBBCが選ぶ「Sound of 2020」にて2位入賞。
ー小さい頃はどんな子供でしたか?
僕は農場育ちだから、いつも羊を追いかけて走り回っていたよ。日々家族や隣人ばかりで外の世界と離れている生活だった。けど幼い頃から物を作ることが好きで、絵をたくさん描いたり、音楽を作ることも子供の頃から始まっていた。何かをゼロから作り出す欲求は今でも変わらないと思う。
ー幼い頃の自分にアドバイスをするなら?
自分が他人にどう思われているかを気にしないこと。世の中多くの人々が他人の目を気にしすぎていると思う、少なくとも自分はそうだった。そんな他人の目を気にせず、もっと誠実に自分と向き合うことが大事だというのを昔の自分に伝えたいかな。
ー音楽を始めたきっかけは?
家に兄が弾いていたピアノが置いてあった。ある日、自分がピアノの前に座り、試しに弾き始め、後に簡単な曲とメロディーも書き始めた。本格的な音楽を作るようになる10年ほど前。それに、ドラムもやってた。農場での生活は僕にとってラッキーだったと思う。広いスペースがあったから、8歳の頃に両親がドラムセットを買ってくれたんだ。それからはずっとドラムを叩いていたね。とにかく記憶があった時から音楽のことが好きだった。
ー2017年にパブでEASY LIFEを結成したとのこと。その時のエピソードを教えてください。
ベースのサムとは学校の知り合いで、卒業してからも一緒に音楽を作り続けてたんだ。ドラムのオリヴァーとはFacebookで知り合い、彼が元々ギタリストのルイスと繋がっていて、4人はそんな感じで集まってたね。ある日、地元の有名人だったジョーダンが主催する「ホース・ミート・ディスコ」というパーティに参加し、パブに居たジョーダンに勢いで「EASY LIFEに参加してください」と誘ったら快諾してくれたんだ。EASY LIFEの歴史はそこから始まったね。
ーメンバー全員がマルチプレイヤーというのは、楽曲制作においても良い影響を与えていますか?
すごく良い質問! 僕が最初に習得した楽器、そして最も得意な楽器はドラムで、サム以外の他のバンドメンバーもみんなできるしキーボードのジョーダンもドラムが一番得意だ。メンバー同士がリズムでの共感やライブの時に呼吸が合う盛り上がり方も、ドラムで通じる感覚のおかげだと思う。メンバーの多くはキーボードもギターもできるから、楽器ならほぼなんでもプレイできる。全員できるからこそ、自分が担当するパートを一番上手にプレイしなければならない緊張感があるから、バンドに良いエナジーをもたらしていると思う。
ー地元レスターはどんな街ですか? 周りの音楽シーンのトレンドは?
レスターはイギリスのど真ん中にある町で、ほとんどの場合は他の都市に行く度にだけ訪れる町。他の都市に比べてサイズが小さいけど綺麗なところだよ。レスターには様々なカルチャーが交じり合い、アジアやヨーロッパの他の国からの移民も多くて、そのおかげで普段は色んな料理が食べられるから最高に幸せ。音楽は世界中と同じくヒップホップが流行っているね。それにダブとレゲエのシーンも盛り上がっている。様々なサウンドシステムとサウンドクラッシュのイベントがクラブで定期的に開催されているよ。今僕たちとスタジオをシェアしている友人もサウンドシステムを作っている人で、そして実はキーボードのジョーダンも元々レスターの有名レゲエバンド出身。いまもツアーの時に、ボーカルにダブやディレイを入れたりしている。そしてレスターは音楽とカルチャーに対し、とても寛容的だと思う。どこの出身、何の仕事をしているか関係なく、好きな音楽を聴ければ良いと思っている。このような自由で、多様性のある環境に居たからこそ、僕たちがバンドを始めた頃に、様々なジャンルのアイデアと要素を自由に取り入れられ、今の僕らのスタイルになっていると思う。
ー音楽制作のプロセスで心がけていることは?
音楽を作るときはいつも、はっきりとした方向性を設けないようにしてる。ゼロから自由に制作することを心がけていて、曲を作るプロセスこそがゴールで、結果と同じく大事だと思う。僕は昔一生懸命“良い音楽”を作ろうとした時期もあったけど、そんなマインドだと絶対に失敗してしまう。その考えを持つことさえもダメ。なぜなら、ファンとオーディエンスはそれを見抜く力を持っているから。音楽業界ではそういった現象をよく見るかもしれないけど、作り手はそこに引っかかりがちで、気を付けた方が良いと思う。
ーMVやアーティスト写真での幻想的なビジュアル表現は、音楽の存在意義自体も幻想的に捉えているからでしょうか?
僕たちのビジュアルはいつもシュールで、現実と幻想の境界線で遊んでいる。MVも同じ。だけど音楽はそれと違って、いつもリアル。歌っている内容のほとんどは自分や友達、そして家族に実際に起きた出来事。曲のインスピレーションも日常生活から引っ張り出すものが多い。でも今進行しているプロジェクトでは、よりシュールでダイレクトじゃない表現の歌詞にも挑戦してるよ。僕たちはMVを通し人々に“変になる”権利を与えたい。MVは僕たちのセンスとスタイルを伝える重要なメディアだから、曲に合うような破天荒の動画とビジュアルにすることを大事にしているね。
ー自身の弱さも含めたありのままの表現が多いですが、同世代やリスナーに対するメンタルヘルス的な意識はありますか?
曲の中で語っているストーリーのほとんどは僕の実体験で、誰しも経験したことのあるような普通の気持ちを伝えていると思う。それが聴いている人たちに届き、何かしらの影響を受け、彼らも同じように周りの人たちに自分の気持ちをどんどん伝えていけばいいなと思っています。思うままに口に出すことはとても大事なこと。でも自分の気持ちを他人に伝えることはなかなか難しいのも分かる。僕も本来は自分の悩みをわざわざ誰かに話すことが得意じゃないけど、でも音楽、歌詞、曲、詩という形なら、実際より語りやすくなるんだ。音楽というメディアを通じて、自分の考えていることを表現できるのは本当に恵まれていると思う。自分の心を閉じ込め、気持ちを他人に話せない人があまりにも多い、無意識のうちに自殺まで落ち込んでいくケースも多いしね。僕たちのアルバムを聴いて、自身の制限を外したり、自分の気持ちを好きなだけ口に出したりすることになれればなと思う。アルバム公開前は、歌詞でここまで率直に語るのは大丈夫かなって迷ったけど、でも結局、思っていることをそのまま伝えないとなと思って。素直な気持ちが伝えられて嬉しかった。
ー作詞・作曲活動自体が、ご自身のメンタルヘルスにも繋がっていると思いますか?
そうだね。自分のメンタルステートはわりと曲の出来上がりによって影響されてしまうかもしれない。実は悲しいときには逆に良い曲が作れたりするから、激しい気持ちはアートやクリエイティブにとって良い燃料になっていると思う。音楽は基本的に一種の感情表現だから、自分の気持ちが曲の全てになると思う。だから自分の心境を掴むために「僕はいま何を感じているのか」「僕は最近元気なのか」「みんなが注目すべきなことはなんなのか」って、常に自問しているし、曲作りはそこから始まる。
ー普段どんな環境や機材で音楽を作っていますか?
『Life’s A Beach』を制作した時は、小さなアパートで彼女と一緒に住んでいたから、彼女の邪魔をしないために、音楽機材を全部ベッドルームにぶち込んだ。彼女は普段リビングで仕事して、自分はベッドルームで音楽制作。ベッドの上は様々な鍵盤とワイヤーでいっぱいで、今思えばすごかったよ。そういえば、僕たちは今すでに2枚目のアルバムを制作している! 今回は新たなスタジオを借りて、人生初めて自分のスタジオを持つことになってすごく嬉しい。ベッドの上でPCをガチャガチャやるのと違って、家から出て自分のスタジオに通う日々は幸せだよ。これまでの半年間はずっとスタジオ内に引きこもって、2枚目のアルバムがほぼ仕上がった。とても良い仕上がりで、かっこいいアルバムになりそうだから、ワクワクしているよ! ウェス・アンダーソンやディズニーワールドの世界観を音楽で表現する作品を作っているんだ。まだまだ未完成の段階で詳しくお伝えできないけど、実験的な作品をたくさん作ってる。ぜひお楽しみに!
ー初めてリスナーに自分の曲の中で一曲を紹介するなら?
最初に聴くべき曲は、2017年に出したファーストソング『Pockets』。それで僕らのルーツと変化がわかる。でももしEASY LIFEの曲を気軽く始めようとするなら、最新アルバムの『ocean view』とかもおすすめ。
ー最近自分の中で何か変化はありましたか?
最近は2年ぶりにようやくツアーを再開したけど、ずっと家にいる状態から急にツアーが復活してパブも行けるようになって。信じられないかもしれないけど、人と会う時は今まで以上に不安を抱えるようになった。彼女が言うには「あなたはずっとこんな感じで、変わってないよ」と言われているけど、歳につれ不安と恐怖心が増している気がして。なぜだろうね(笑)。
ー次の活動・リリース予定を教えてください。
僕たちは今UKツアーをやっている最中。久々のツアーで最高に気持ち良いよ。来年にはヨーロッパとアメリカツアーが控えている。そういえば、元々2020年に日本に行く予定があったけど、ロックダウンでコンサートが中止になって本当に残念だった。でも来年行く予定を立てていて、バンドのメンバーみんなが日本に行くのを楽しみにしてる。日本のファッションと食べ物が本当に好きで、もう行くのが待ちきれない! 日本大好き!
PHOTOGRAPHY : JOE VOZZA