#006-Kowloon

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Instagram:@officialkowloon
 

LA出身のミュージシャン兼映画監督。自宅のホームスタジオから楽曲制作のほとんどを自ら手がける。2020年の『Walk With Me』の発表から活動を開始。2021年にはデビューアルバム『Come Over』リリース。同年にはシングル「Hurt」が仏名門レーベルKitsunéのコンピレーション『Kitsuné America,The West Coast Edition』に収録されるなどその完成度の高さがうかがえる。

 
   


 

ー音楽を始めたきっかけは?

ラップが好きだったんだ。1998年頃まではサウンドプロダクションやサンプリングに興味があって、その年にGang Starrがリリースした『Moment Of Truth』を聴いて、音楽を作りたいって思ったんだ。DJ PremierとPete Rockは、僕にとって最初のヒーローだよ。

 

ー最新曲について教えてください。

最新アルバム『Come Over』は、ディスコ、エレクトロニック、クラシック・ロックにインスパイアされて制作したんだ。催眠術のような感覚をつくり出すことが僕にとって重要。Fleetwood Macの「Dreams」、Mariaの「心臓の扉」、Talking Headsの「This Must Be the Place (Naive Melody)」のように、いつまでも聴いていられるようなものを作りたいといつも思っているし、それがこのプロジェクトの目標なんだよ。タイトル曲と、「Late Last Night」以外、このアルバムは全て僕が演奏し、録音し、ミックスしている。それが、このアルバムに孤立と親密さを与えているんだと思う。

 

ー音楽を作る上で大切にしていることは?

常にオープンでフレキシブルであること。そして自分が何を目指しているかという先入観を持つんじゃなく、正しいと感じたことに従うことが大切。

 

 

ーアーティスト名に込めた意味は?

このプロジェクト名が生まれた時、僕は香港にいたんだけど、ちょうど九龍城砦の廃墟を見たタイミングで深い感銘を受けたんだ。それまで存在していた都市が、次の日にはなくなっていることに衝撃を受けた。ブルドーザーは、木や金属やセメントと一緒に、住民の記憶も破壊してしまったんだ。そこに住み、働き、学校に通い、結婚した住民たちの物理的な記憶は、全てなくなってしまった。彼らは突然、記憶の難民となった。急速に変化していくこの世の中で、自分が生まれ育った町を知ることができる人はほとんどいないことに気付いた。皆、過去の記憶の難民。だからこそ、僕たちはノスタルジックになるし、最近のアートが回顧的であったり、レトロなんだと思う。そして多くのアーティストが、過去についての考古学者のような存在になっているし、僕もまさにそうなっている。だから九龍という名前にしたんだ。

 

音楽活動をしていて良かったこと。

SNSを通じて、僕の音楽でつらい時期を乗り越えたと声をかけてくれる人がいる。僕のヒーローの音楽はいつもそうしてくれたので、それを少しでもお返しできるのは、とても幸せなことだと思っているよ。

 

ー最近気になっているアーティストや、今尊敬しているアーティストはいますか?

最近はTom Bukovacに夢中。彼はナッシュビルのセッションギタリストで、パンデミックの時に自分のギター演奏をYouTubeに投稿し始めた。彼の演奏はとても素晴らしくて、音楽が溢れ出てくるような感じなんだ。

 

ーあなたが影響を受けた音楽やその他の芸術は?

たくさんの音楽からインスピレーションを受けてきた。David Bowie、Al Green、Marvin Gaye、David Axelrod、CHIC、James Jamerson……挙げたらきりがないほど。最近は坂本慎太郎とToro y Moiをよく聴いてるよ。あと映画も、僕の人生に大きな影響を与えてくれた。Stanley Kubrick、Andrei Arsenyevich Tarkovsky 、Wim Wenders、Ernst Ingmar Bergman、Federico Felliniは、みんな僕の人生において偉大な人物たちだよ。

 

ー趣味は何ですか?

音楽理論を追求するために、最近はよくギターを弾いている。僕は全ての楽器を独学でやっていて、子供の頃にドラムの初歩的なレッスンを受けた以外は、20代半ばまで楽器を手にすることはなかったんだ。ベースギターを手にしてから、自分が聴きたい音楽を知り、キーボードも弾くようになった。ギターは、音楽理論を学ぶにはもってこいの楽器だと思う。

 

ー最近買ったもので気に入っているものは?

60年代のFenderのギター、Musicmaster II Student Modelを買った。誰かが純正のピックアップを壊して、60年代のGibsonのP90を2つ乗せてボディーを剥き出しにしていて音は最高! 今も僕のすぐ隣に置いてあるよ。

 

ー音楽以外の仕事はありますか?

編集と映画撮影。

 

ー気になっている社会問題は?

未来がとても心配。あらゆるところでファシズムが台頭し、プロパガンダがニュースに取って代わり、地球温暖化は隠蔽され、多くのグループが権力者によって疎外されてる。SNSが僕たちの脳を根本的に変えてしまったことについても心配だ。でも諦めたくはない。

 

ーあなたにとって音楽とは何ですか?

僕にとって音楽は薬のようなもの。他のどんなものよりも、悲しいときに僕の心に届くんだ。

 

ーあなたの夢は何ですか?

僕の子供が、僕が育ってきた世界と同じような世界を楽しむこと。そしてその子が、素晴らしい力を発揮できるようになることかな。

 



*このインタビューは2022年5月14日に発売されたVI/NYL #006のために実施されました。

*写真は全てアーティストからの提供です。

 

■VI/NYL