フランス・マルセイユ出身。気鋭の新興レーベル「Moonrise Hill Material」や「FHUO Records」を立ち上げたBruno Bourmendilによるプロジェクト。幼少期に習得したドラム、ベース、ギターなどの演奏経験をルーツにした卓越した音楽センスを持ち、リヨン国立管弦楽団との活動など、幅広いジャンルのプロジェクトに携わる。ジャズ・ソウルの要素を巧みに昇華したモダン・ハウススタイルのDJ・プロデュースが特徴で、フランス国内のみならず世界中で高い評価を受ける奇才。
ー音楽を始めたきっかけは?
4歳か5歳の時に祖父母がドラムキットをくれたので、自分の強いエネルギーを消費することができた。ロックだとRadioheadやOasis、Pink Floydとか、あとはジャズも。Miles Davisや、George Duke、それにJamiroquaiも好きで、小さい頃からギターを習い始めたんだ。僕の音楽への愛と熱はそこから始まったと思う。
ー初めて聴くリスナーにおすすめする曲は?
リリースした作品の中では「The Journey」が一番好き。ルールやサウンドを気にせずに、自分の好きなものを自由に作れるということを表現できた曲だからね。この作品では、フレンチタッチ、アフリカン・ディスコ、アシッド、アンビエントとか、色んなジャンルをミックスしたんだ。“自分らしさ”が詰まっていておすすめ。
ー音楽を作る上で大切にしていることは?
創作活動の中で自由を感じること。最も重要なのは、その時々に自分が望む音楽を作ること、自分が感じたことや心に抱いたことを表現すること、そして聴いてくれる全ての人たちにそのメッセージを明確に伝えること。それが音楽を作る上で自分が大切にしてきたことだね。曲の中でストーリーを語って、リスナーを旅に連れ出したいって思って曲作りをしてきたよ。
ー影響を受けた音楽やアートは?
映画や本は、常に自分の作品に大きな影響を及ぼしていると思う。僕のアーティスト名は、実はStanley Kubrickの『Dr. Strangelove』のフランス語名なんだ。僕のEPの名前のほとんどは、映画やテレビ番組と繋がっていて、それが本なこともあるよ。
ー音楽の仕事以外に別の仕事をしていますか?
あまりしていないね。でも、レーベルマネージャーもしているし、本も書いているし(今のところ出版はされていないけど)、これも仕事と言えると思う。
ーもし音楽をしていなかったら何をしていたと思いますか?
本を書くことだね、間違いなく。
ーどのような環境と機材で音楽を作っていますか?
小さなホームスタジオを持っていて、Stratocasterのギター、FenderのJazz Bass、AKAIのMPC2000、ドラムマシン数台、RolandのシンセサイザーJUNO-2、JD-Xiが置いてある。世界で一番好きな楽器、ローズ・ピアノを持っていることも光栄なこと。
ー若い頃の自分にアドバイスを。
今やっていることを続けて。学び続けて努力し続けて大変なときも自分のしていることを信じ続けて。
ー最近買ったものでお気に入りは?
先日、マイホームを購入したよ ! 家族の生まれ故郷に家を買うのがずっと夢だったから、本当に達成感があるよ。
ー気になっている社会問題は?
クラブやフェスティバルでの女性の安全について。クラブで悪いことがどんどん起こり、多くの人の安全を脅かしているんだ。クラブは安全な空間であるべきで、誰もがくつろげて良い気持ちでいられて、リスクがないように、みんなが調和していられるようにしてほしい。僕が立つイベントでも、チームと一緒に誰にとっても安全であることを保証するために一生懸命取り組んでいるけど、すごく時間がかかってる。
ーあなたにとって音楽とは何ですか?
メロディーと言葉を通して、音の旅を通して、その場を離れて新しい世界に行くための手段。僕の人生において良いときもつらいときも、浮き沈みの激しいときも、常に音楽は本当に大切なものだった。それに、学習やコミュニケーション、価値観やメッセージを共有する手段でもあるんだ。
ー最新曲について教えてください。
「Birds」をリリースしたばかり。南スーダンのアーティストEmmanuel Jalをフィーチャーした曲で、この曲で僕たちが組めたことは素晴らしいことだったと思うよ。様々なジャンルの交差点に位置するような、その間の限界を曖昧にするような曲。なりたい自分になる自由や自分の考えや行動に自信を持つ自由について書きたかったんだけど、それが自然に実現したんだ。
ー今はどんな音楽を作っていますか?
踊るための音楽を作っている。この数年間は、1曲目から最後まで聴かせるような、ストーリーを持たせてリスナーに色んなムードや感情を与えるようなアルバムをリリースしてきたんだけど、また何か違うものが欲しいと思って。今は全くそれとは違う曲を制作しているんだ。でも常に踊ることを念頭に置いているね。時にはメランコリックなものであったり、陽気なものであったり、いつもハウスミュージックというわけではないんだけど、今こういうものを作るのが気持ちいいなと感じるよ。
ー今後の活動・リリース予定を教えてください。
9月にリリースする予定の曲は、まだあまり詳しくは言えないんだけど、僕の仲間や僕をフォローしてくれている人、作品を応援してくれている人たちへのラブレターのようなものになる予定。その前に、僕の人生のほとんどはツアーなんだけど、ヨーロッパで『Power to the PPL』のツアーをやるよ。楽しみにしていてね。
*このインタビューは2022年8月10日に発売されたVI/NYL #008のために実施されました。
*写真は全てアーティストからの提供です。