#008-Wet Leg

#008-Wet Leg

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@wetlegband


イギリスのワイト島出身、Rhian TeasdaleとHester Chambersからなるインディロックバンド(現在はサポートメンバー含め5人で活動)。シニカルでパンキッシュな音楽性でUKはもちろん世界各国のメディアで絶賛され、本年は『Glastonbury 2022』にも出演。Dan Careyがプロデューサーを務めたデビューアルバム『Wet Leg』が本年Dominoよりリリース、2023年には来日公演も決定している。

 


The Face』『The Observer』『The New York Times』『NME』など、デビューシングル発表時から世界中のメディアで絶賛されたギターバンドWet Leg。イギリスのワイト島というのどかなロケーションから生まれたインディーロック界の新星に特別インタビュー。即完した来年の初来日に向け予習しておきたい。

ーお二人の出身であるワイト島はどういったところですか? ロケーションや暮らす人々について教えてください。

HESTER ワイト島はとても小さな島。町が少しあるだけで、大きなシティみたいな場所はないの。でも、ワイト島にはクリエイティブな人たちがたくさん住んでいるし、夏には観光客ですごく賑わう。とってもきれいな場所よ。

 

ー幼少期はどんな子供でしたか?

RHIAN ずーっと歌ってる子供だった。私は4人きょうだいの末っ子だから、上の3人から黙れ! って言われてたけど、それでも歌ってたの(笑) うるさくて、イラッとする子だったと思う(笑) 駄々っ子だったしね(笑)

HESTER 私は覚えてないなぁ。私がここで答えても、ママから「そんなの嘘よ!」って言われそう(笑)

RHIAN いや、どんな子供だったか聞いたことがないなら、きっとそれは、困った話がなかったんだと思う。それくらい良い子だったんじゃないかな。きっとエンジェルみたいだったんだと思うよ。

HESTER いや、絶対に天使ではなかったと思う(笑) 絵をたくさん描いてたのは覚えてるな。庭の中を走り回るのが好きだったことも。あと、夏は姉妹で水風船合戦をしょっちゅうやってた。あんまり覚えてなくて、良い答えじゃなくてゴメンね(笑)

 

ー幼い頃から変わらない性格は?

RHIAN 回数は減ったけど、私はいまだに駄々をこねるし、まだうるさいし、社交的。そこは変わってないと思う。

 

ー幼い頃の自分にアドバイスするなら?

RHIAN 歯を磨きなさい、かな(笑)

HESTER ピアノを習うのを辞めちゃダメ。ちゃんとレッスンに通い続けてって言いたい。辞めちゃったのを今すごく後悔してるから。

RHIAN 良いアドバイスだね!

 

今の若い世代に伝えたいことは?

RHIAN もしあなたが今少し途方にくれてて、自分が何をしているのかわからない状況に陥っていたら、そして、特にそれがクリエイティブな仕事に就こうとしている中で起こっているなら、あんまり心配しすぎないようにしてみて。自分が好きなこと、やりたいこと、作りたいものに集中し続けていれば、最初は自分が作りたいものが作れなくても、そのうち何か良いものがきっと生まれる。そのためには、いい人たちに囲まれていることも大切よ。

HESTER これもすごく良いアドバイスだね。

 

ーデビューアルバムリリースから数カ月、反響はどうですか?

HESTER すごく良い反響をもらえていると思う。アルバムのことをたくさん聞いてもらえるし、こうしてたくさん話すことができてる。私たちもとても良い経験をさせてもらっているの。

RHIAN ほんと、とっても嬉しい! ショーをできているのもすごくクールだし、みんなが一緒に歌ってくれているのを見ることができてすごく幸せ。シングルだけじゃなくて、アルバムの曲まで一緒に歌ってくれているの。観客側の後ろの方とか見ると、ロブスターのハサミを付けて手を上げてる人がいたりして(笑) そういうのを見ると嬉しくなるわね。

 

ー特に意外だった国の反響はありますか?

RHIAN オーストラリアでアルバムが1位になったのにはビックリした。アメリカでトップ50に入ったのもクレイジーだったしね。イギリスのインディーバンドがアメリカでそこまで注目してもらえるなんて。日本のテレビで紹介してもらえたのもすごいことだし、2人とも、日本に行くのを本当に楽しみにしているの。来年の2月だからまだまだ先だけど、カレンダーを見ながら心待ちにしてる。

 

ー来日が待ち遠しいです! 日本に対するイメージはありますか?

RHIAN 私は日本に1回行ったことがあるんだよね。お姉ちゃんが日本で英語を教えていたから、お姉ちゃんに会いに行ったの。4年くらい前かな。あの時は岐阜に行ったんだけど、今度日本に行く時の経験は、その時とは全然違うものになると思うから、すごく興奮してる。4年前も、新幹線に乗ったり、色んなところに行って本当に楽しかった!

HESTER 私はまだ行ったことがないの。だから、どんな場所なのか見てみたいし、日本に行くのが本当に待ちきれない。(※来年Wet Legの来日公演が決定、アナウンス済み。『Wet Leg JAPAN TOUR 2023』2023年2月12日(日)東京追加公演/SHIBUYA O-EAST、2023年2月13日(月)名古屋公演/名古屋 CLUB QUATTRO、2023年2月14日(火)大阪公演/梅田 CLUB QUATTRO)

 

ー日本でしてみたいことは?

RHIAN 今とにかく忙しすぎて、色んなことを考えている時間がなくて(笑) まだ何をしようか考えてないんだけど、とにかく楽しみなことは間違いなしね。色んな人に会って、街中を歩いて、モチを食べたりしたいな(笑)

 

ーいま特に気になっている社会問題はありますか?

HESTER やっぱりアメリカの中絶の違法化はすごく悲しいことよね。イギリスにいると、そんなことが問題になるなんて考えたこともなかったし、そんな状況がどれだけありがたいことかに気づかされたわ。アメリカみたいな世界で一番進んでいる国の一つでそんなことが起こっているなんて、本当に恐ろしいと思う。

 

ー影響を受けた音楽以外のエンタメと、その魅力を教えてください。

RHIAN 映画は好きなんだけど、新しい作品はあんまり観てないの。最近また観始めたのは『Matilda』。昨日の夜も今日の朝も観た。あの映画は、もう何百回も観てるんだよね。本当に大好き。

HESTER “difficulty”のスペルを言うシーンのところが好き。

RHIAN あのシーンね! あの映画は、また映画館で観たいな。まだやってるところがあるんだよね。

HESTER すっごく楽しいし、セットデザインも素敵だし、すごくクリエイティブな映画だと思う。

RHIAN 『Matilda』は、誰もが知るキッズ・ムービー。へスターが言った通り、セットデザインが本当に素敵で、コスチ

ュームのデザインもすごくクールなの。

 

ー音楽はどんなガジェットで聴いてますか?

RHIAN 私は、17歳から持ってるヘッドホンをいまだに使ってる(笑) audio-technicaの普通のヘッドホン。

HESTER 私は、小さなBluetoothのヘッドホン。たぶんSONYだと思う。

 

ーここ最近で一番ハッピーなニュースは?

RHIAN 私のお姉ちゃんに赤ちゃんが生まれたの! まだ会えてないんだけど、会えるのがすっごく楽しみ。

HESTER 私は、悲しいことにハッピーなニュースが思いつかない(笑) でも、毎日パーティーみたいに楽しいし、すごくハッピーよ!

 

ーWet Legの歪で独特なユーモアセンスはどこから生まれていますか?

RHIAN 聞かれるたびにみんなに話してるんだけど、私たち、自分たちが何をやっているのかハッキリと把握してないの。降りてくるものを受け入れてるだけ。難しいことはわからないまま、自分たちの経験と勘を頼りに行動してる。ちゃんと計算したりはしてないんだよね(笑) “ロブスターのハサミを使ってミュージックビデオ作ってみよっか?”“いいね!”みたいなノリなの(笑) 座って話し合うとか、何かルールを決めたりすることはないし、何でもアリなスタンス。バンドを始めた時の目的も、ただ楽しむためだったし、それは今でも私たちが求め意識していること。今どんどん忙しくなってきちゃって、活動がシリアスになってきちゃったし、みんなも私たちをシリアスに捉えるようになってきた。でも、私たち自身はシリアスになりすぎないようにしてるの(笑) バンド全員でいつも内輪ネタで冗談を言ってるし、それって私たちにとっては大切なことなんだよね。

 

ーインスピレーションを受ける瞬間はどんなときですか?

RHIAN フェスティバルの場にいるとすごくインスピレーションをもらえる。私たちがバンドを始めた時は、友達のバンドたちと一緒にライブをやって楽しんでた。だから、音楽を作るときも、ライブでどんな音楽をプレイしたいかっていうのを考えてるの。ライブは、私たちが大好きなことだから。私たちがバンド活動を楽しんでいる理由は、ライブができるからなんだよね。他のアーティストの演奏を見ているのも刺激になるし、グラストンベリーでも素晴らしい瞬間をたくさん見ることができた。自分がどんなにライブが好きかに改めて気付かされたの。

 

ー悲しみなどの繊細な感情を、あえてユーモアを交えて伝えるのはあなたたちなりの優しさでしょうか? そこに理由はありますか?

RHIAN “泣くか笑うか”って言うでしょ? 悲しいことが起きたとき、私たちは笑うことを選んでる。何か嫌なことが起こっても、もう状況が最悪すぎて笑うしかない、みたいな(笑) しょうがない! そういうこともあるよね! って思うようにしてるの。まぁ、たまには泣くしかないときもあるけどね(笑)

 

ー悪趣味なテイストの歌詞とギターミュージックをかけ合わせたWet Legらしさは、どのようにしてできましたか?

RHIAN 自分の内側から出てくるものだから、それを言葉で説明するのは難しい。さっき歌詞のことを言ってもらったけど、書いた本人はそれに気付いてさえいないんだよね。言われて初めて、言われてみれば、確かに私たちが書く歌詞にはほろ苦いユーモアが交ざっているかもって気付かされる。ギターに関しては、アルバムを作っている時のことを振り返ってみると、へスターがすっごく惹きつけられるギターラインをたくさん思いついてくれたの。すごく特徴的な、頭に残るギターライン。そのおかげで、ここまで注目してもらえるようになったのかもしれない。ヘンリーのドラムもそうだし、全員がそれぞれに自然と特徴のある何かをもたらしてくれているんじゃないかな。それが組み合わさって、Wet Legらしさが生まれているんだと思う。それが生まれるのは、私にとっても不思議なことなの。話し合わなくても、純粋に私たちの間に生まれる何かがバンドらしいサウンドを作り出してるのは確かなんだよね。私たち自身にとってもすっごく変な感じ(笑) ヘンリーじゃない人がドラムを叩いてくれた時があったんだけど、その人はちゃんと言われた通りにドラムを叩いてくれているのに、その時は何かがやっぱり違うように感じたんだよね。いったい何が違うのか、私にもそれはわからないし、説明できないんだけど、私たち5人だからこそ作れるエナジーは確実に存在していると思うな。

 

 

ーデビューアルバムをプロデュースしたDan Careyとの制作はいかがでしたか? エピソードもあれば教えてください。

HESTER 彼との作業は最高だった。ダンは本当に素晴らしい人で、彼からはたくさん学ばせてもらったと思う。彼は、私たちが予想できないことができる人だから。たくさん励ましてくれるし、情熱たっぷりだし、彼のスタジオもすごく美しい。彼と一緒に仕事ができたのは、本当にクールな経験だった。

 

ーWet Legはやはりお二人の印象が強いですが、他のメンバー(エリス、ヘンリー、ジョシュア)についても教えてください。

RHIAN エリスとジョシュアには17歳の時に学校で出会ったから、付き合いが長いの。ドラマーのヘンリーに最初に会ったのは海だった。サーフィン女子会みたいなのをやってたんだけど、その時のサーフィンのインストラクターがヘンリーだったのよね。そこから仲良くなって、ドラマーが必要だったからバンドに入ってもらったの(笑)

 

ーそれぞれ(ヘスターはリアンを、リアンはヘスターを)どういった人物か教えてください。

HESTER リアンは、めちゃくちゃ面白いの。そして最高にクールで、すごくクリエイティブ。素晴らしいソングライターでもあるし、彼女と友達でいられて、私は本当にラッキーだと思う!

RHIAN ありがとう。へスターは超カッコイイ。大人しそうに見えるけど、ひそかにカッコイイの(笑) へスターは、実はすっごいロックスターなんだよね。彼女は気付いてないかもしれないけど。そしてすごく優しいし、いつも自分のことより先に周りの人たちのことを考えてる。私たちのクルーって、今結構人数が多いんだけど、へスターは、いつもみんなにコーヒーが欲しいか聞いて、入れてくれるの。優しいよね。

 

ー今はどういった音楽を作っていますか?

RHIAN 今はちょっと忙しいんだけど、自分たちが今からどんな音楽を作っていくのか、私たち自身もすごく楽しみにしているの。バンドメンバーも増えたし、みんなでちゃんとコラボレーションして曲を作ったらめちゃくちゃ楽しいと思う。

 

 

INTERVIEW : SADANORI UTSUNOMIYA

TRANSLATION : MIHO HARAGUCHI

 

*このインタビューは2022年8月10日に発売されたVI/NYL #008のために実施されました。

*写真は全てアーティストからの提供です。