2000年生まれ、NY出身の日系アメリカ人ラッパー/プロデューサー/ビジュアルアーティスト。現在地元NYを拠点にインディペンデントに活動を行っており、コンテンポラリーヒップホップとネオソウル、ポップを融合させた楽曲が特徴。NYの老舗クラブKnitting Factory、ライブハウスMercury Loungeといった会場でのライブを精力的に行い、着実に話題を集めている。2019年にデビューアルバム『Kumo Mono』を発表、最新EP『SANDBOX』を6月にリリースしたばかり。
ー音楽を始めたきっかけは?
両親は音楽家ではありませんが、僕は幼い頃からずっと音楽に惹かれていました。日本のテレビ番組『SMAP×SMAP』や『ミュージックステーション』でSMAPの演奏に合わせて踊っていたのを覚えていて、ジャニーズの一員になりたいと強く願っていました! 音楽は僕の人生において、家族を除けば唯一不変のもの。小学校から高校までクラシック音楽を本格的に勉強してきましたが、現代音楽のアプローチでもっと自分を表現できると感じていたので、今ここにいるのかもしれません(笑)
ー子供の頃のことを教えてください。
僕はクレイジーな子供でいつも飛び回っていました。母によると、スーパー戦隊のおもちゃで遊んだり、マイクに向かって走ったり、壁に向かって演奏したりと、よくその辺を行ったり来たりしていたそうです。
ー子供の頃から変わっていないことは?
大人になった今でも、物事に対して心からわくわくすること。同世代の人たちは大人っぽく見せようと興奮を抑えていることが多いんですが、それが僕にとっては面白くなくて。子供の頃からそういう意味で大人になりたくないと思っていたし、今もそう思っています。純粋であるからこそ最高の表現ができるのだと思います。
ー初めて買ったアルバムは何ですか?
初めて自分のお金で買ったアルバムはEminemの『Recovery』でした。その頃Eminemが大好きで、僕がラップを知るきっかけにもなった人。彼の昔の曲は今でも僕の心の中に残っています。
ーアーティスト名にまつわるエピソードは?
本格的に音楽をやろうと思ったときに、自分の本名が一番しっくりくるような気がして。子供の頃、自分で作ったラップネームがたくさんあったんだけど、どれもひどいものばかりだった(笑)
ー影響を受けた音楽やアートがあれば教えてください。
ポップミュージック、ラップ、R&B、クラシック、ジャズ、その全ての音楽が僕の人生そのものを形作ってきたし、アートは特に年齢を重ねるごとに自分が世界をどう見ているかという価値観を形成してくれたと思う。子供の頃、村上隆にとても惹かれていて、作品の色使いと彼のクリエイティビティが大好きでした。
ー最も影響を受けた人物は?
間違いなく家族です。両親はとてもしっかりしたモラルと人生観を持っていて、子供の頃も今も彼らにとても共感しています。あとは友人たちですね。
ー音楽を作る上で大切にしていることは何ですか?
表現するものがいかに自分にとって真実であるか、ということ。僕はある意味とてもミーハーで、何か新しいことや刺激的なことを耳にしたら、すぐにそれを真似してまずはやってみようとします。時には、出来上がっているキャラクターやペルソナを自分に叩き込んでみるのも楽しいしね。でも、実際に自分が世に送り出すものは、自分らしい音や感覚でなければ、とも思っています。
ー最近興味を持ったアーティストはいますか?
友達全員。Cisco Swank、NONEWFRIENDS.、Laura Elliott、Eliyah Judah。彼らは最も刺激的で才能のあるアーティストで、僕の限界を押し広げ、もっとクリエイティブに、もっと表現したいと思わせてくれる存在。
ー最新作について教えてください。
リリースしたばかりのEP『SANDBOX』では、4曲それぞれで僕の違った一面を表現しています。僕のこれまでの恋愛経験を追ったプロジェクトなんです。「MCQUEEN」は、とても表面的で“ファストフード”のような視点から愛を綴ったもの。一方「MISS JANE」は、純粋に心を通わせる相手を見つけたときに感じる、愛から得られる喜びを表現しています。僕の軽快さと自己内省の両方がミックスされている曲です。「WHY! (Jack's Joint)」は喪失感と後悔について、「MY SANDBOX」は誰かと交際するときの不安と向き合った楽曲です。僕は、最高の音楽とは常に、闘争と平和などといった対照的な2つのアイデアが混ざり合ったものだと信じています。
ー今どんな音楽を作っていますか?
今は音作り的に次にどこに行きたいかを考えているところ。そのために、Ye(Kanye West)、Stevie Wonder、Mac Miller、Michael Jackson、Tyler, The Creator、山下達郎といった、僕の人生において最も大きなインスピレーションを与えてくれたアーティストたちのディスコグラフィーを聴き返しています。彼らの作品から得られる刺激によって僕のパレットを形成し、それらの要素全てが混ざり合ったものが、僕にとって最も純粋で美しい音楽表現になるはず。
ー今後の活動について教えてください。
できるだけ多くの人と繋がり、一緒に創作することを計画しています。いつでも曲作りに協力してくれるクリエイティブな仲間(Eliyah JudahとJack Redsecker)がいるけど、新しい人たちとクリエイティブ活動をすることは、自分のコンフォートゾーンから抜け出して創作に臨まざるをえなくなるので、自分が何を世の中に発信していくのかを考えるには、とても良い方法だと思っています。
*このインタビューは2022年8月10日に発売されたVI/NYL #008のために実施されました。
*写真は全てアーティストからの提供です。