韓国・弘大のインディシーンを拠点に活動する、Betheblue(Vo/Gt)、Park Seongho(Gt)、Lee Jungyeol(Dr)、Choi Junyoung(Ba)からなるバンド。ベッドルームポップ、ローファイ、ネオソウルなどを通過し、インディロックの心地いい要素をふんだんに取り入れたサウンドで、じわじわとシーンでの存在感を確立。最新EP『Youth Heritage』では、オールディーズなロックに挑戦し新たな魅力を生み出した。全編英詞なので、耳馴染みの良さも魅力。日本での活躍も期待される注目株。
ー音楽を始めたきっかけを教えてください。
いつもヘッドホンをして音楽と共に生きているような青年だった。いつしか「音楽を作らなければ」という衝動に駆られて、作り始めたんだけど、最初の頃はただ音に乗せてラップをするだけで、音楽の知識や楽器に興味がいくことはなかったんだ。そんなある日、誕生日に母がヤマハのアコースティックギターを買ってくれて。高校生の頃にはバンドに入る機会があり、初めて生歌も経験。まだコードの読み方も知らなかったし、タブ譜の数字だけをひたすら覚えているような感じだったけどね。小さな村に住んでいたから、音楽をまともに教えてくれる人もいなければ、当時YouTubeも今のように盛んじゃなかったから、生身で色んな壁にぶつかって少しずつ上達していく経験はスリリングだったと思う。
ー子供の頃から変わっていないことは?
“遊ぶのが大好き”なこと。愛犬と遊んだり、旅行に行ったり、ゲームをしたり。人生において自分がハッピーになれる何かをずっとディグってるんだけど、そういった時間だけ僕はいつもチルってる。
ー音楽をしていなかったら、何をしていたと思いますか?
好きなフィギュアやポスターでいっぱいの居酒屋を経営してると思う。自分の好みが詰まった場所で、お客さんとおしゃべりしながらお酒や料理を提供するのは、本当に居心地が良くて最高。
ーどのような環境や機材を使って制作していますか?
87danceの音楽は全て自宅の小さなスタジオで制作してるよ。作曲からアレンジ、レコーディング、ミキシング、マスタリングまで全部。でも一番便利なのは携帯電話の録音機能かな。歩いている時、仕事をしている時、移動中にぼんやりと浮かんだメロディーを録音する。そのデータを家に持ち帰り、手早く作業する。ほとんどの曲はこうして出来たものだね。今考えると、携帯電話の録音機能がなかったらとても不便だっただろうなと思うよ。
ー音楽活動をしていて良かったと思うことは?
おそらくメンバー全員が同じような答えをすると思うね。それは「たくさんの人に僕たちの音楽を届けて、気に入ってもらうこと」。僕たちが活動する弘大のインディーズシーンの特性上、ファンのみんなの表情一つひとつが見える近いステージで活動していて、音楽を通じてたくさんコミュニケーションをとってるんだ。こういったことが日常になっていることを誇りに思うし、いつも感謝の気持ちで満たされている。これからももっと頑張るよ!
ー最新EP『Youth Heritage』について教えてください。
今作は「子供の頃、何が一番尊かったか?」というアイデアから始まったんだ。それは、思い返すとたぶん“好奇心” “いたずら” “友達”そして “遊びまわること”が当時の僕にとって人生の最大の理由だったと思う。昔の自分にインスピレーションを与えてくれた音を思い出しながら、当時の情熱とロマンに溢れたサウンドを表現した。色あせていながらも温かく、繊細でありながら生々しい感じをイメージして、僕が90年代から00年代にかけて感じたドーパミンの再構築としてまとめられたと思う。
ー音楽を作るうえで、大切にしていることは?
何より心地よく聴けること。リラックスできる音楽を作るためには、大げさ過ぎず、でも面白いものでなければならないし、全体の流れも退屈なものであってはならない。楽器やボーカルももちろんダサいものであってはならない。思っている以上に細かい努力が必要なんだ。そのためには、まずリラックスしたトーンで歌うことが心がけてる。だから、レコーディングの時は友達や恋人と電話しているような感じかも。サウンド面では、“海に浮かんでいる感じ”とか“暗い夜の霧”とか、そういった抽象的なイメージを音でデザインするように意識してる。
ー次のリリースやその他の活動予定について教えてください。
今年中にシングル、アルバムともう1枚EPをリリースする予定。すでに何曲か着手していて、ブラッシュアップしながらクオリティを上げる作業中だね。『Youth Heritage』が、これまであまり表現できなかったロックの要素を含んでいたから、次のアルバムはおそらくチルやドリーミーなオルタナティブ、これまでが僕らがやってきたスタイルに仕上がると思う。
ー最近何か変わったと思いますか? もしそうなら、どのように?
挑戦することはいつだって楽しいけど、挑戦することで生じる失敗はやはりつらいものがある。以前は失敗を恐れることはなかったけど、正直なところ、今は恐れがあると思う。あともう一つは、自分が納得できない曲が出来上がった時に、これまではその曲を何とか良くしようとしがみついていたけど、今は潔く捨てる方法を学べた。すぐに代替案を見つけられたり、またすぐに新たな曲を作り出せる人間になれたこと。その結果、よりシャープに、より客観的になれたと思う。
ー最後にあなたの夢を聞かせてください。
今はまだ大きな夢だと思うけど、世界中でパフォーマンスをしたい。よく旅をする中で同じ業界の友達が出来るんだけど、彼らの国で一緒にパフォーマンスをして、ユニークな人生を一緒に築いていきたい。まだまだ先は長いけど、みんなに良いニュースを届けられるよう、これからも頑張るよ。
INTERVIEWEE:BETHEBLUE