#001-Squid

#001-Squid

Squid

Instagram:@squidbanduk

 

UK・ブライトンの大学生による5人組バンド。異なる音楽背景を持つメンバーで構成された結果、ロックやジャズ、電子音楽までハイブリッド。複雑かつ緻密なサウンドを体現している。一方でボーカルは土臭く、真っすぐ。WARPも契約するUKポストパンクの新鋭。

 

■ VI/NYLのご購入はこちらから ■

 

 

ージャズ、テクノ、ポストロック、『Near The Westway』では、オーケストラアレンジまで加えました。ジャンルレスな制作のインスピレーションはどこから受けていますか?

僕たちの音楽が一つのジャンルにとらわれていないのは、自分たちが様々なことに興味を持っているからだと思う。僕たち自身もリスナーとして聴いていて驚かされる音楽が好きだし、それは自分たちの音楽にとっても重要な要素なんだ。あと、僕たちは5人それぞれが互いに異なる音楽テイストを持っている。それも作る音楽が一つの形に定まらない理由の一つだね。

 

ー真っすぐなビートに対して、音の構造は緻密。そのバランス感は感覚的にやってますか? 意識的にやってますか?

作り始めはけっこう真っすぐだと思う。そこから色々実験してみたり、アイデアを乗せて重ねていくうちに緻密になっていくんだ。ぐつぐつ煮たった鍋にアイデアを放り込んでいく感じ。あえて複雑にしようとか、シンプルにしようと意識しているわけじゃない。シンプルなアイデアで十分で、それをそのまま曲にする時もあるから。

 


ーFranz Ferdinand、Lily Allen、Tame Impalaなどを手がける名匠Dan Careyがサポートしていることも話題となっています。彼はどういった人ですか?

すごく上品でもあり、同時に奇人でもある。ある一つのアイデアにものすごくフォーカスしてそれにひたすら力を注ぐこともあれば、次から次へと新しいアイデアに移っていくこともあるんだ。そんな彼を見ているのはすごく興味深い(笑) 彼は、僕たちの親しい友人にもなれた。一番最初に作業をした時は彼を知らなくて、彼の反応を気にしたり緊張もしていたけど、今ではそんなこともなくなりすごく心地よくなった。スタジオの外でも会うようになったしね。

 


ーバンドは大きな成功を収めつつあると思いますが、それによって取り巻く状況や環境、周りからの見られ方に変化はありましたか?

もちろん皆Squidの音楽を気に入ってエンジョイしてくれているわけだけど、それと同時に、僕たちの音楽が変化を続けるものであることも理解してくれているとも感じているんだ。それは、僕たちに自分たちが作りたいものを作り続けていいんだという勇気をくれている。人々がショーに来て一緒に歌ってくれている姿を見ると本当にありがたいと思うし、僕らの音楽の様々な要素を総括して受け入れ、楽しんでくれていることに心から感謝しているよ。それがあるから、僕たちも進化し続けていられるんだ。ライブのやり方もそうだし、皆が変化を受け入れ、喜んでくれるから、連鎖反応のようにこちらも成長し続けられるんだ。

 

 

ー活動をしていて、ジェンダーの差や“らしさ”のようなものを感じたり、意識するようになったりはしましたか?

男性っぽさ、女性っぽさというアイデアは音楽業界にも存在していると思う。音楽業界では、性差別やその間の境界線はいまだに大きな問題でもあるし。でも僕たちは、それを避けている。なるべく自分たちがやりたいことに集中して、有害で変に男勝りな表現なんかはしないようにしているんだ。そういったイメージは、そもそも僕たち自身が繋がりを感じるものでもないしね。

 


ーコロナ禍になって気付いた自身の変化はありますか?

自分の変化ではないけど、コミュニティーの大切さや有り難さに気が付いた。パンデミックが始まるまで、その存在が当たり前のように思っていた。でもコロナで集まることができなくなり、コミュニティーの意味がより明白になったんだ。音楽仲間もそうだし、家族や友達もそう。今となってはロックダウンに慣れてしまって、最初に感じたあのショッキングな驚きはもう消えてしまったのがすごく変な感じだけど。

 


ー自分たちの中で変わったことは?

新しい音楽の書き方を見つけたことかな。インターネットを使ってもっと曲を書くようになった。会うのは最低限にして、個々で曲を書くのは、それはそれで面白いよ。ショーやフェス、ツアーで観客やバンドメンバーに囲まれて生活することに慣れていたけど、自分の時間を過ごすことと良いバランスが取れるようになったのは良かったと思う。

 


ーそれらはどう昇華されていきましたか?

どう昇華されたかは自分ではわからない。前は全員ブライトンに住んでいて、ずっと一緒に時間を過ごしていたけど、今、僕とオリーとローリーはブリストルに住んでいるんだ。昇華されたというか、メンバー同士の繋がり方がコロナを通して変化したと思う。それぞれ生活している環境が変わったからね。例えばアーサーはロンドンでボートの中に住んでいるし(笑) どこにボートを止めるとか、彼には彼のやるべきことがある(笑) だから、メンバー同士の会い方が変わったんだ。その分、皆で会うと前より集中できるようになった。もうすぐUKツアーが始まるから、久々に皆で長い時間を過ごすことになる。また一緒に飲んだり食べたりできるのは楽しいだろうな。

 

 

ー今はコロナで難しいかと思いますが、普段はどういった場所で何をして遊んでいますか?

正直、今はほとんど制限がないんだよ。いくつか行けない国があるくらいで。国によっては出入国できても隔離生活をしないといけない国もある。でも、普段の生活は前より断然ノーマルになってきた。前はこんなことができてたんだったなっていう感覚を取り戻しつつある。それが再びノーマルになることの方が不思議に感じるけどね。コロナの前後で変わったのは、電動スクーターでの移動(笑) 皆人混みの中での移動を避けるようになって、電動スクーターがより活躍するようになった。あれは良い変化だな。今ではバーも開いているからバーにも行くし、友達のバンドを見に行ったり、家族に会ったりしているよ。

 

ーあなたたちが住んでいるブリストルは今どんなムードですか?

生活も普通に戻りつつあるし、皆ポジティブだと思う。でも、アフガニスタンのニュースが出てきたりで、それには心を痛めているけどね。それがあるから、完全にお祝いムードではない。世界がやっと回復しようとしている時に、それをさらに難しい状況にしようとしている人たちがいるなんて信じられない。今、それに関して自分たちは何ができるかを考えているところなんだ。

 

ー日本に比べイギリスは社会的弱者を救う取り組みが多くあると思います。抑圧された人に対して、音楽ができることは何だと思いますか?

まず僕らにできることは、音楽を通しファンベースを利用して、支援金を集めることだと思うんだ。ギグに来た人に寄付を頼んだりね。実際に今、そういう話をしているところ。それ以外にも何ができるか、今も模索しているところなんだ。

 

ー最近気になっている社会問題は? 

ありすぎてどこから始めればいいか。今は選べないな。

 

ー周りの音楽シーンのトレンドは?

超現実的でアートスクールっぽい、ノイズっぽい音楽が流行ってると思う。例えばMermaid Chunkyっていうデュオがいるんだけど、彼女たちはすごく良い。あとはFaux Realっていうデュオも。すごく表現豊かなデュオで、音も素晴らしいんだ。彼らみたいに、少人数でステージ上でビッグなサウンドを作っているバンドが人気だね。一対一で音を奏でているのに、サウンドは超ビッグ、みたいな。

 

ー自分たちの中ではどうですか? 気になっている音楽ジャンルはありますか?

来週ツアーが始まるから、またアンビエント系の音楽にハマるかも。ツアー中って車の中にいることが多くて、窓から見える景色がどんどん変わっていく。その景色の移り変わりには、メロウなアンビエントが合うんだよね。だから今、自分のコレクションを掘って良さそうなアンビエントを探しているところ。

 

ー音楽はどんなガジェットで聴いてますか?

いまだに父親のアンプを使ってるんだ。父親が18歳の時に買ったやつなんだけど、今でもサウンドが良くてさ。80年代のヤマハの何か。そんなに長い間使えているなんて、さすが日本のクオリティーだよね(笑)。 音楽を聴くのはパソコン。YouTubeやBandcampで聴いてる。イヤホンは壊れてしまって、最近はすっごい安い適当なやつを使ってる。そろそろちゃんと買わなきゃな。

 

 

ー影響を受けた作品は?

最近見た『All Hands on Deck』という映画には影響を受けたな。フランスの映画で、ギヨーム・ブラック(Guillaume Brac)っていう監督の作品。彼は素晴らしい監督で、フランスの移住者たちに興味を持っているんだ。彼は同時に休暇というテーマにもハマっている(笑) 『All Hands on Deck』は、面白おかしくもあり、同時に美しくもある。ロマンチックな関係から家族の繋がりまで、様々な人間関係が描かれていて面白い。すっごく笑えるんだけど、見ていてすごく気持ちが良くなる映画なんだ。

 

ーあなたにとってメンターは? 

Will Burgessっていう友達。彼は周りにいる人たちの中で一番面白い人。何かにぶち当たった時、彼に会えば気持ちが上がる。実は、最初に僕らの音楽を発見してくれた人も彼なんだ。彼のおかげで今のマネージメントと知り合った。ショーの時もいつも来てくれるんだ。

 


ー幼い頃から変わらない自分の性格は?

僕は昔から、一つのアクティビティーから次のアクティビティーに移らずにはいられないんだよね。注意力が続かないんだ(笑) 音楽を聴くのもそうだし、演奏するのもそう。それはずっと変わらないだろうな。自分の周りには、半分しか済ませてないことがたくさんある(笑) 一つのことをなかなか終わらせられない性格なんだ。

 


ー好きなスタイルはありますか?

僕は特にないけど、イギリスではフットボールのジャック・グリーリッシュ(Jack Grealish)選手の髪型が流行ってるよ(笑)

 

ーいつか日本でライブしてもらえますか?

もちろん。日本に行くことは一番やりたいことの一つ。まだ日本に行ったことがないし、文化が本当に美しそうだし、行ったらたくさん刺激を受けるんだろうな。

 

 

【RECOMMENDED TUNES】
「Kingdread Spirit」Faux Real


さっき話したし、音もすごく良いから。


「Amulet B」Deliluh


僕とオリーが見つけたバンドで、本当に最高なんだ。今年の夏「Green Man Festival」っていうフェスで彼らの演奏を見たんだけど、あれは素晴らしい経験だった。エナジーがすごくて、コロナ禍に入って始めてあんなにエモーショナルになったと思う。あの瞬間は、この夏のハイライトの一つだったな。


「aoe_advancing」No Moon


とにかく、アンビエントとブレイクビート、ジャングルリズムのバランスが良い曲。そしてこのトラックをリリースしている「CRAIGIE KNOWS」っていうグラズゴーのレーベルも最高なんだ。最近のリリースではないけど、最高のリリースだと思う。

 

 

 

*写真は全てアーティストからの提供です。 

 

掲載号:VI/NYL#001(2021年9月28日発売)

  

■VI/NYL

ご購入はこちらから

Instagram

Twitter

Linktree