#002-CL

#002-CL

CL

Instagram:@chaelincl

 

17歳にして、K-POPシーンに降臨したレジェンド・グループ2NE1のフロントウーマンとして爆発的人気を獲得。2016年にソロ活動に乗り出し、2019年「People’s Choice Award」で“最もインスパイアされるアジア人女性”を受賞、本年はファッション界最大の祭典「MET GALA」にK-POP女性アーティストとして初参加。この冬、待望のソロデビュー作『ALPHA』でシーンへの帰還を果たした。

 

■ VI/NYLのご購入はこちらから ■

  

 

女王の帰還。アジアンディーバとして圧倒的プロップスを獲得するCLが、本年ついにカムバックを果たし、世界へ向け高らかにその存在を誇示した。VI/NYLでは、コロナ禍にあったこのビッグニュースを盛り上げるべく、リモータブルに独占フォトセッションを敢行。シーンへ凱旋帰還を果たした女王の、ここだけのスペシャルな撮り下ろしとインタビューを収録する。

 

 世界にセンセーションを巻き起こしたK-POPムーブメントの中でも、ひときわ存在感を放っていたガールズユニット2NE1。“ガールクラッシュ”という言葉・定義が浸透する随分前、まだ女性に対する偏見やディスアドバンテージも残っていた2009年にデビューし、そのファッション性の高さやエッジの効いたサウンドメイクで、韓国や日本はもちろんアメリカからヨーロッパまで、インターナショナルなスケールでフリークスを拡大していた。

 制服で均一に整えられたかわいらしさや、過剰にボディコンなセクシーさでもなく、あくまで、いちアーティストとして権利拡大を主張するその姿勢は、ことアジアにおいては特に稀有な出来事だった。そのレジェンド的存在である2NE1のリーダーがCLだ。2016年のグループ解散後、アメリカに渡りソロとしての活動をスタート。水面下で着実にスキルアップと制作を重ね、2019年にはミニアルバム『In The Name Of Love』をリリース、 2020年には独立レーベル「Very Cherry」を発表し本格的な再始動を予感させた。そして2021年夏、満を持して『ALPHA』プロジェクトを投下、この冬自身初のソロアルバムをついに完成させた。

 2NE1としてのデビュー2年前(2007年)にソロデビューを果たしていたCLは、ここまで実にキャリア13年。タフでインディペンデントな象徴として君臨した彼女が、初となるソロアルバム『ALPHA』の完成をどう捉えているのか、心境を語ってくれた。

「自分の様々なパフォーマンス、全てのクリエイティブ、映像に触れてくれた人たちに私が思い描く通りのインスピレーションを伝えたい。今はただそのことに全力を注ぎ込んでいます。父はいつも「大きなことのために小さな一歩、小さなことのために大きな夢を持たなければならない」と言ってくれました。今はこの『ALPHA』の完成について、そんな風にフォーカスしています」

 完成の喜びを真摯に喜びつつもふつふつとたぎらせる想い、さらなる境地へと邁進せんとする強い意志。一世を風靡しながらも、決して楽な道のりではなかったであろうここまでの13年間は、様々な変化を繰り返した年月だったのではないか。

 「私たちはみんな変わる。みんな成長していく。変化という言葉が正しいかわからないけれど、私たちは経験から学び間違いなく成長していく。そう、この13年間、私も変化し成長してきました……もしそうじゃなかったら困っちゃいますね。さらに大きな視点や別の観点から振り返ると、本当に変化だらけでした。2NE1からソロになって、K-POPだけの世界からツアーで世界中を飛び回るようになり、新しい人と出会い、音楽だけでなくファッションも一緒に作り上げていくようになったり、そんな様々なレイヤーが折り重なってる。そして今ようやく、私は独立したアーティストとして、自分のレーベルからファーストアルバムを出しています。これこそが最も大きな変化です」

 先行して公開された「SPICY」では、気鋭プロデューサーBaauerとSokodomoによるハイパーポップ×トラップのような激しいサウンドに、自身を刺激的なソースに例えた緩急自在なフロウとセルフボースティングで、改めて自らのアイデンティティーを高らかに示した。本人役で出演した『マルコヴィッチの穴』や『二十日鼠と人間』でも知られる演技派・ベテランハリウッド俳優John Malkovichが、冒頭のモノローグで参加したのも話題に。

 「彼は私にとって多くの意味を持つ人。メンターという表現が適切かわからないけど、私にとって彼はただただJohn Malkovichという存在。彼の共有してくれる話は共感することが多く、学ぶこともたくさんあり、とても気に入っています。私がアメリカに一人で滞在するときは、いつも面倒をみてくれるんです。彼のファミリーも歓迎してくれるし、とても親しくさせてもらっています。本当にありがたいし恵まれていることですよね」

 同曲は「THE BADDEST FEMALE」「Hello Bitches」などの系譜を継ぐ、女性であることやアジアンであること、コリアンであること、偏見にさらされることもあったであろう自身のアイデンティティを、その代表として堂々と歌い上げる真骨頂のような楽曲。

「「The Baddest Female」から「Hello Bitches」へ辿り着く過程、これはGZBのアンセム(女性賛歌)なの。常に私はGZBとして代表であり続ける。それは自分が常にCLであるということ。「Hello Bitches」のセカンドバースには文化的なエッセンスがたくさん溶け込んでいたけれど、新作の「SPICY」では、さらにたくましく、強いアジア人女性像が色濃く表現されています。そうしたエレメントが私を進化させ、より溶け込ませていくんです(※GZBは韓国語の発音の英語表記で女性の意。ひいてはCL自身のアイデンティティーを指している)。自分に誇りを持ち、自分を受け入れ、そして良いお手本になれたらと。自分自身のことやライフストーリーを音楽にして伝える。当然ながら韓国人女性として表現しています」

 一方、昨年時点でリリースしていた「HWA」では、韓国では馴染み深い“ムクゲノ花が咲きました”というフレーズを引用。全米で戦う上で、改めてコリアンとしてのプライドも強く誇示。(※ムクゲノ花が咲きました=日本の“だるまさんがころんだ”)

 「これが私のファーストソングであり、アーティストとして独立した時のファーストシングルでした。「In The Name of Love」プロジェクト後、インディペンデントアーティストとして自分を紹介するための曲にしたかったんです。この曲にはたくさんのレイヤーがあるけど、端的に言えば「Everyone freeze!! I'm back!!」てこと。そして韓国の伝統的な遊びを世界中に紹介したいと思い、この曲に「ムクゲノ花が咲きました」を取り入れました。内容的には「Don't try me!!」 (逆説的な挑発/自分がイケているということの誇示)」

  正直ミュージシャン、アーティストのみならず、他のジャンルを見ても、ここまでアジア人女性としてガールズエンパワーメントを貫く存在はいないのではないか、と思う反面、その重責にさいなまれてしまうのではないかという杞憂さえ浮かんでしまう。

 「責任は感じないようにしています。それよりもっとお互いを高め合えるような……そういう感じになれたらと。みんなにそう伝わってくれるなら、私にとってのエネルギーとモチベーションになります。そうですね、なんていうか私だけがやっているのではなく、一緒に刺激し合えたらと思いますね」

 とっくに達観した境地に辿り着いていて、その覚悟さえもポジティブなバイブスに満ちている。なんて頼もしいんだ。その音楽性の発露はどこから生まれてくるのか。 「私が伝えたいストーリーやメッセージから始まります。多くの場合、普段の生活やフェーズを通過する過程の中における自分との対話の中から生まれます。自分自身に向き合い恐れに立ち向かう。それこそがフェーズ。『ALPHA』はまさに、それらのストーリーやメッセージが内在する問題を克服することがテーマです」

 ヒップホップ、アジアン、フィメール、そしてエンタメ。そうしたカテゴリーでの可能性全ての希望となり得る新たなリーダーとも言えるのではないか。でも決して強いだけではない、内包された儚い人間味の部分にも多くの共感が集まるのだ。

 「私はパワフルな楽曲を歌うけれど、それだけが自分の持ち味ではないんです。もちろん色んな側面があります。「SPICY」が“私”の唯一のキャラクターではなく、『ALPHA』にもアーティストとしての“CL”がいます。今では、このCLと素顔のChaelinが上手くバランスを取っています。もちろんメディアに映し出されることは様々ですが、そういうものと戦わずしてバランスを取る方法を見つけたんです」

 生身の自分自身も尊重しながら、アーティストとしての女王CLとしての強さもしなやかに併せ持つ。理想と現実のギャップに葛藤するのではなく、どう立ち向かい乗り越えるのか。CLはそれを示してくれている。 「人は誰しもそう(ギャップに葛藤する)だと思います。『ALPHA』は実際そういうテーマで、恐れることに直面したとき、どうやって克服するかをテーマにしています。恐怖を乗り越えるために経験した色々な感情についての私自身のストーリー。恐怖を感じ向き合うことから始まる。誰にでもそういう時はあるし、そこからどうやって克服し、何を生み出すかが重要なの。『ALPHA』はそのためのもの。このアルバムが、その感情を乗り越えるきっかけになれば嬉しいです。今、CLとChaelinは同じくらいの時間を過ごしてきました。ようやくバランスを見つけることができたんです」

Q  音楽を始めたきっかけは?

A  ダンスがきっかけです。ダンスが好きで、自然と音楽を聴くようになりました。一緒に歌ったり踊ったり。つまりダンスから始まったということですね。

 

Q  幼い頃の自分にアドバイスするなら?

A  特にアドバイスはないけど自分を信じて、ただ生きていく!

 

Q  音楽がなければ何をしていたと思いますか?

A  考えたこともないですね。もし音楽以外でやりたいことがあれば間違いなくやっていたと思います(笑)

 

Q  制作のインスピレーションはどこから受けていますか?

A  映像的な意味でいえば、パフォーミングがすごく重要な要素です。映像や舞台の演出を考えるときは、自分の姿をイメージしてパフォーミングやダンスを構成し、そこにファッションや他のビジュアルなどを加えていきます。

Q  イライラしているとき、余裕がないときはどう解消する?

A  まず、そういう経験をするのは当たり前だと自分に言い聞かせます。あとは体を鍛える! 走ったり、エクササイズしたり、踊ったり。そういう日は体を動かすのが好きです。

 

Q  最近ハマっているものは?

A  正直なところ、今は時間がなくてそういうことからはかなり遠ざかってしまっています……。

 

Q  今年買ったお気に入りの物は?(日用品、家電なんでもOK)

A  実は、新しいシーズンに入ると新しい下着を買うのが大好きなんです。

 

Q  最近ハマっているアーティストは?

A  自分自身!

 

Q  初めて購入した曲(アーティスト)は?

A  Lauryn Hill

PHOTOGRAPHY : NICK WALKER†

STYLING : ALESSANDRO FRANCALANCI†

HAIR : SAMI KNIQHT†

MAKEUP : SANG JEON

TEXT : SADANORI UTSUNOMIYA

 

*写真は全てアーティストからの提供です。 

 

掲載号:VI/NYL#002(2021年12月30日発売)

  

■VI/NYL

ご購入はこちらから

Instagram

Twitter

Linktree