#007-Johan Lenox

#007-Johan Lenox

 
Instagram:@johanlenox
 

マサチューセッツ州ウィンチェスター出身の彼は、2016年にKanye West(Ye)とベートーヴェンを掛け合わせたオーケストラコンサート『Yeethoven』のコンポーザーとしてキャリアをスタート。以来、Vic MensaやNo I.D.といった大物と共に活躍してきた彼だが、2019年に発表した『everybody’s cool but me』を皮切りにセルフプロデュースを開始。今年の5月にはニューアルバム『WDYWTBWYGU』を発表し、ますます多くの注目を集めている。

 

 

ー音楽を始めたきっかけは?

初めて音楽に触れたのは、子供の頃、実家にあったピアノを独学で弾き始めた時。それからもう少し大きくなってディズニーランドで『インディ・ジョーンズ』の映画音楽を使ったショーを観たんだけど、そのサウンドトラックに夢中になって、それがきっかけで映画音楽の作曲をしたいと思うようになったんだ。それから作曲のレッスンを受けるようになって、その先生が現代的なクラシック音楽へと僕を導いてくれた。学生時代はクラシック音楽にかなり没頭していたんだけど、後にKanye Westの音楽に出会ったことをきっかけに、突然ヒップホップにのめり込んでいったんだ。あれは大きなインパクトだったね。

 

ー最近の自分を象徴していると思う曲は?

「You Up?」は僕のアルバムの雰囲気をよく表している曲。郊外のドライブにもぴったりな音楽なんだけど、僕が作曲したクラシカルなパートが使われていて、特に、世界が燃えているときに女の子にメールを送る、という歌詞が特徴的。

 

ー音楽を作る上で大切にしていることは?

音楽を作るときに最も重要なことは、それが新しいと感じられるものであること、僕たちの周りで起こっている音楽の上に、興味深い方法で構築されていること。レトロな音楽や“後ろ向き”な音楽には、あまり興奮しないんだ。そういう音楽を作る人のこともリスペクトしているし、何度か曲作りを手伝ったこともあるけど、シンプルに僕の好みじゃない。自分の音楽は常にフューチャリスティックで新しいものにしたい、それが一番大事なこと。サウンドや音楽そのものの境界線をもっと広げていきたいんだ。

 

 

ーあなたが影響を受けた音楽やその他の芸術は?

Kanye Westの音楽は、特にクラシックミュージックの世界から出てきた僕に大きなインパクトを与えてくれた。彼は芸術的に非常に挑発的な選択をしながらも、マスなオーディエンスにもアピールすることができて、カルチャーに影響を与える能力を持っている。すごく興味をそそられたよ。僕もいつかそんなことができるようになりたいと思っているんだ。

 

ー初めて買った曲やアルバムは何でしたか?

最初に買ったアルバムは『Indiana Jones and the Last Crusade』という、『インディ・ジョーンズ』のサウンドトラック。今でも大好きな映画で、作曲家になりたいと思ったきっかけの音楽だからとても思い出深いんだ。

 

ー音楽活動をしていて良かったと思うことは何ですか?

自分のスケジュールを自分でコントロールできて、やりたくないことは基本的に断れる。これは本当にラッキーで、幸せなことだと思っているよ。例え最大の目標を達成できなかったとしても、これほどまでに自由で、上司に見守られることのない人生を送れていることを心から嬉しく思うね。

 

ー好きな言葉は何ですか?

“spectacle”という言葉が好き。僕の好きなアートやエンターテイメントの多くが、まさにこの言葉に集約されていると思う。僕も、もっと多くのものを創造できるようになりたい。

 

今月リリースしたばかりのデビューアルバムについて教えてください。

アルバムタイトルに付けた『WDYWTBWYGU』は、「what do you want to be when you grow up?(大人になったら何になりたい?)」の略で、アメリカの子供たちに向けて、遊び心や自分の将来について大きな夢を抱かせるための質問を投げかけた作品なんだ。だけど今は未来があまりにも不安定で、夢を見ることが難しい。だからこのアルバムでは、そんな状況に対処しながら、大人という言葉の定義が曖昧な世界で大人になろうとすることをテーマにしているんだ。

 

ー内容的にはどんなサウンドになっている?

自分が持っているクラシックミュージックのバックグラウンドと、楽器パートのアレンジのスキルを、どのようにポップミュージックに活かせるのか、ということを本当に考えたいと思っていたんだ。ヒップホップが大好きだということ、歌や将来への不安や恐怖についての歌詞、バイオリン、チェロ、クラリネットのために作曲する能力など、自分の人生の様々な側面を、サウンド的にも感性としてもこの作品に持ち込もうとしたんだ。それらの要素を全てまとめるのは大変だったけど、最終的な出来栄えにはとても満足しているよ。

 

ー今後の活動・リリース予定を教えてください。

この夏、ロサンゼルス在住のクラシック作曲家Ellen Reidと『Yeethoven』でも指揮をしていたオーケストラ指揮者のYuga Cohlerとコラボレーションしたアルバムをリリースする予定。僕の好きなクラシックの作曲家と、ヒップホップやポップスのボーカリストを集めて、たくさんの作品を織り交ぜてアルバムを作ったんだよ。隔離という制約の中で、僕たちのやり方でクラシックの作曲を行ったんだ。本当に面白いプロジェクトだと思うし、みんなに聴いてもらえるのが楽しみだね。

 

 

*このインタビューは2022年5月23日に発売されたVI/NYL #007のために実施されました。

*写真は全てアーティストからの提供です。

 

■VI/NYL