TuimiことPhạm Thuỳ Miはベトナム系ドイツ人のシンガー/ラッパー。ホーチミンとベルリンを拠点に活動している。2017年のシングル「Purpose」が脚光を浴びたことでキャリアをスタート。2020年にベトナム国内のTV番組『King of Rap』で準優勝し、ベトナムの地でもその人気を確固たるものにした。同年に発表されたデビューアルバム『softcore|hardshell』は英・ベトナム・ポルトガル語を取り入れた挑戦的な作品として評価された。
ー音楽を始めたきっかけは?
初めて音楽に触れたのは3歳の時で、家族と一緒にカラオケで歌ったのがきっかけ。両親は私の可能性をかなり早くから見抜いていたみたいで、5歳の時にピアノを買ってくれたの。その頃からドイツのベトナム人コミュニティーのための地元のステージで演奏するようになって、その後、ドイツ政府が資金援助している音楽アカデミーにもしばらく通っていたわ。18歳の時に、ユニバーサルミュージック出版のA&Rから、ソングライターになってポップミュージック業界でキャリアを積むことを勧められて。その瞬間から、私は世界中の素晴らしいアーティスト、共同作曲家、プロデューサーとコラボレーションし、作曲とプロデュースの技術を学ぶことができたの。
ーアーティスト名に込められたストーリーは?
私の名前はThuỳ Myで「Tuimi」と発音するんだけど、ドイツで生まれ育ったから、小さい頃からみんな私の名前を正しく発音できなかった。それでわかりやすくするために今の名前に書き直したの。
ー影響を受けた音楽や芸術は?
ドイツのドレスデンで生まれたのもあって、美術館に行くのが好き。18世紀から19世紀にかけての名画を見ると、今でも毎回感嘆の声を上げちゃうくらい。あと、クラシックピアノの経験があるから、クラシックミュージックも好きなの。ChopinやDebussyを聴きながら読書をするのが、私にとって何よりの癒しよ。
ー影響を受けた人物は?
母と姉は、今の私の考え方や仕事に対する倫理観に大きな影響を与えてくれたと思う。音楽的な部分では、Stevie Wonder、Alicia Keys、Pharrell Williams、Ye、Timbaland、John Legendなど、彼らには大きなインスピレーションを受けたわ。彼らは全員素晴らしいマインドの持ち主だと思う。
ー最近気になっているアーティストは?
サンフランシスコ・ベイエリア出身のベトナム系アメリカ人で、R&Bアーティストであるthuyは本当にクールだと思う。彼女の声とトーンは本当に最高で……ぴったりな言葉が見つからないほどよ(笑) しかも全てインディーズでやってきたということも尊敬してる。音楽とメッセージが優れていれば、メジャーでもインディーズでも関係ないっていうことを証明してくれる存在よ。
ー自分の曲の中で今の気分におすすめの曲は?
「Sao Hoả feat. 16 Typh」かな。これは、ロックダウン中にリビングでセルフプロデュースした曲で、私がプライドを持って作ったバイリンガル曲の一つ。この曲のアイデアはすごく自然に浮かんできて、制作のプロセスもかなりスムーズだったのを今でも覚えているわ。
ー最新曲について教えてください。
デビューアルバム『softcore | hardshell』は、本当に特別なプロジェクトよ。友人たちの助けを借りながら、2年かけて完成させたの。このアルバムは、Def Jam South East Asiaとコラボレーションする機会を与えてくれて、彼らのマーケットでリリースされる最初のベトナム人アーティストになることができたのは誇りよ。
ー今はどんな音楽を作っていますか?
2枚目のアルバムに取り組んでいるところで、今回はR&Bとポップスをベースにした作品になるの。パンデミックの影響で、プロデューサーとZoomでコラボレーションしたり、Instagramでビートを送ったりしてる。制作過程を通して、古くからの人間関係を癒して、自分の中の親友を改めて見つけることができたわ。
ー音楽を作る上で大切にしていることは?
気持ち良くて正直なものであるということ。私はあまり分析的にならず、できるだけフローに任せるようにしているの。だけど、ピースを拾い集めるときには、まず自分自身がその音楽に納得してから世に送り出す必要があると思う。
ー音楽をやっていて良かったと思うことは?
ライブで演奏し、オーディエンスと繋がるのが本当に好きなの。そのエネルギーはとても神聖なもので、音楽の持つ力はとても大きいと思うし、誰かを楽しませることができるのはとても光栄なことよ。曲を作り創作することは、私に興奮を与え続け、“ゾーン”に入っているときは他に比較できないくらい最高の気分になる。別の側面では、アジア系の子供たちに対して、芸術の道に進むことを厳しく指導する親もいるから、そんな子供たちを励ますことができるというのも嬉しい。
ー今後の活動・リリース予定を教えてください。
次のアルバムでは、東京の才能あるヒップホッププロデューサーSIBAと、ニューヨークのマルチインストゥルメンタリストでありグラミー賞受賞者のDan Edinbergとコラボワークをする機会があったの。アルバムがいつリリースされるかはまだわからないけど、準備ができたらできるだけ多くライブをして、ファンのみんなにも記憶に残る体験をしてほしいと思っているわ。
ーあなたにとって音楽とは何ですか?
私にとっての音楽とは、親友であり、セラピーであり、精神修行であり、人生のスパイスよ。
*このインタビューは2022年5月23日に発売されたVI/NYL #007のために実施されました。
*写真は全てアーティストからの提供です。
■VI/NYL