Rémi ForsanとAmine Amaraからなるフランスとチュニジアを拠点とするインディーデュオ。ハウスとサイケデリックロックを融合させた独自のサウンドへの信頼の高さは、各国のフェスに多数出演している実績が裏付けている。楽曲の発表はキャリアに対して少ないながらも、最新EP『Take Me Higher』を2022年3月にリリースしたことでフルアルバムへの期待が高まる。レーベルArt Vibesの運営に自身らも参加、楽曲制作だけに留まらない多岐に渡る活動を行う。
ー音楽を始めたきっかけは?
音楽は常に生活の一部でした。ロック、ジャズ、レゲエ、クラシックなど様々なジャンルを聴いて育ち、音楽は常に私たちの存在と外の世界との関わりにおいて中心にありました。Pandhoraのプロジェクトは、私たち2人が会社員としての生活に不満を抱いていたことからスタートしました。閉塞感を感じ、その時のライフスタイルから抜け出したいと思っていたんです。少しずつ音楽制作を学び始めましたが、私たちのギタリストとピアニストとしての経歴は、その過程で非常に役立ちましたね。数年間実験し、2015年にようやく自分たちが安心して世に出せる楽曲を制作できました。私たちのディスコグラフィーは、私たちの人生のようなもので、カラフルで、感動的で、予測不可能で、非常に幅広いものです。
ー初めて聴くリスナーにおすすめの一曲は?
Pandhoraを知るためには、2021年にリリースされたEP『Floating Consciousness』をおすすめします。このEPは、どちらかというとホームリスニング的な雰囲気で、繊細なディテールがたくさんあり、全体的にポジティブで希望に満ちた雰囲気のある作品です。音楽を通して人間の意識を探求しようというものです。「Aponia」「Euthymia」「Ataraxia」と名付けられた3つのトラックは、意識の状態を表しています。私たちは、この3曲を異なる色彩とテンポで表現し、エレクトロニックミュージックの無限の可能性を追求したいと思いました。
ー音楽以外に仕事をしていますか?
Pandhoraとしての仕事のほかに、世界中のプロデューサーの才能を紹介するレコードレーベルArt Vibesを運営しています。また、南仏ドルドーニュの田舎町に電子音楽を届けることを目的とした、Sparklers Festivalチームにも所属しています。12世紀のシャトー・ドゥ・コマルクで開催された第1回目は成功し、2023年6月の第2回目が待ち遠しいです。
ー最新作について教えてください。
最新EP『Take Me Higher』は、初めて自分たちのボーカルを使った作品です。ロサンゼルスにあるレコードレーベルPipe & Pochetからリリースされました。崩壊しつつある世界から脱出するためのオード(※頌歌、讃歌の意味。古代ギリシャの抒情詩の形式)なのです。1曲目は現代社会への批判をストレートに表現。地球の外には希望がある、だから探検してみないか? と、宇宙探査に焦点を当てた前向きな発言という意味です。2曲目の「Moonlight」は、月や上空の星について考えるというもの。この曲は、現在に存在し、自己を認識することをテーマにしています。人は自己受容に達し、その意識を探求することで、人生や現代を幸せでポジティブに過ごすことができる。この作品は、曲作りやプロダクションの面で、Pandhoraの新しい可能性をたくさん開いてくれました。
ー音楽を作るうえで大切にしていることは?
音楽を作ることは、ある瞬間の写真を撮ることだと考えています。その日の雰囲気、感情、ムードを結晶化させるのです。私たちにとって最高の作品は、常に1回のセッションで作られ、その一瞬を完璧に捉えたものです。そうでなければ、曲のエッセンスは簡単に失われ、忘れられてしまうのです。いったん創作の流れに乗ったら、扉が閉まる前に、この強烈な創作の瞬間を利用することが重要です。周囲の雑音が一切なくなり、深く集中した状態にある自分に気が付く、世界でも最高の気分の一つです。
ー今後の活動・リリース予定は?
2022年の夏はPandhoraにとってかなり忙しく、ヨーロッパ、中央アメリカ、中東で多くのライブを行いました。これからの数カ月はツアーのペースを落とし、ファーストアルバムを仕上げることにエネルギーを注ぐつもりです。いくつかのデモを集めましたが、それを磨き上げ、きちんと形にする必要があります。このアルバムでは、様々なフォーマットやエモーションを探求していきたいと思っています。今までの作品よりもさらに実験的なものになると思います。
ー最近あった嬉しいニュースは?
9月下旬にチュニジアで行われるフェスティバル『Les Montagnes Acoustiques』(※チュニジアの世界遺産を活用した文化、芸術、健康、地域振興などをテーマとしたフェス)に出演することになりました。チュニジアの西部、アルジェリアのとても近くにあるんです。そこに行って、自然の中で何日か過ごすことができるのは、この上なく楽しみです。私たちの友人であるAmentiaもラインナップされているので、一緒に座って音楽を作る予定。彼らの作品に大きなリスペクトをしていて、一緒にジャムをするのが待ち遠しいです。これもツアーの魅力で、他のアーティストと出会って、自分たちの世界を融合させることができます。また、『VI/NYL』から特集の依頼を受けたことは、間違いなく私たちの一週間を豊かにしてくれました!
ーあなたの夢は何ですか?
愛を共有し、互いに一体感を持つこと。Pandhoraの声を使って、セルフケア、マインドフルネス、サステナビリティを促進することです。