2017年にインターネットを介して出会ったOrono、Harry、Tucan、B、Soulの5人からなる多国籍インディーポップバンド。デビューシングル「Something for Your M.I.N.D.」を、Frank OceanやVampire WeekendのEzra Koenigがラジオでプレイしたことで一躍話題に。2018年には宇多田ヒカル本人たっての希望で「パクチーの唄」をリワーク、2019年には星野源とのコラボ曲「Same Thing」を発表するなど、世界中の音楽家からラブコールを受ける。今夏、待望のセカンドアルバム『World Wide Pop』をリリース。
多様性が尊重される現代において、存在そのものがダイバーシティの塊のようなバンドSuperorganism。自由にポップに、ハッピーバイブスを伝えるメンバーから、何を感じて、どのように自分の人生へと還元できるか。自分の周りにあらためて目を向けてみると、きっと世界はもっと興味深いことで溢れているはず。
ーまずはラフにお話を聞かせてください。最近ハマっているものは何ですか?
ORONO さっきもらった飴(※撮影でも舐めているキャンディ)。いろんなレイヤーがあって味が変わる。しゃれたお菓子、すごい。(裏面を見ながら)「虹のムコウ 神秘」って書いてあるね。
ーなかなか怪しいですね(笑) HARRYは何かハマっているものはありますか?
HARRY 『スーパーマリオギャラクシー』。あとサッカー。もうとにかくサッカーが好きで、いつもサッカー観たり、サッカー関連のメディアを読んでます。昨夜、ちょうど女子のヨーロッパリーグのファイナルでイギリスがドイツに勝ったんですけど、それ観てて朝の4時半ぐらいまで起きてました。
ORONO あと今、飛行機にハマってて、YouTubeでフライトシミュレーターとかを観てます。航空事故の再現みたいな、パイロットの交信の音声とか実際の音が出るやつ。パイロットかっけーなって。
ー飛行機にハマったのはいつからですか?
ORONO 昔から。めっちゃハマる時とか、あまり観ない時とか波はあるんですけど。今はまたハマってて、コックピットのシミュレーターを買いたいです。あと実際にパイロットの免許を取りたい。
ー本当に免許を取得することも考えてるんですね?
ORONO 何でもやりたいんだよ。
ーイラストも描いているし、ステージでサックスを吹いたり。かなりいろんなことに挑戦してますよね。
ORONO そうそう、やりたいことがたくさんあるから。アートも好きだし、最近はポッドキャストやったり。YouTubeもやる気満々だし、何でもやりたいっす。パイロットもやりたいし、本の翻訳もやりたいし、本も書きたいし、編集もやりたいし、映画のプロデュースもしたいし、映画の脚本も書きたい。お菓子も作りたいし、飲み物も作りたい。全然使わないけど、化粧品も作りたいし。写真も撮りたいし。でもHARRYもほかのメンバーもみんなそうだよ。みんな、全てのことに興味がある。
HARRY 好奇心を持って学ぶことってすごい大事で、そういうことをやめてしまったらすごく寂しい人生になるんじゃないかな。
ーSuperorganismはそういうメンタリティの人たちの集まりだから、まるで遊牧民のような自由な表現になるんだと思います。それだけ色々とやりたいことがある中で、音楽は自分たちにとってどういう存在ですか?
HARRY 音楽は自分の基礎とか土台となるプライオリティのものであって、人生の地図みたいなもんだね。僕は元々歴史にもすごく興味があってたくさん学んできたんだけど、それはあくまで、趣味で空いた時間に自分のペースで続けていくもの。音楽も子供の頃からずっと大好きで、歴史の勉強と同じような感覚だったんだけど、今はそれがプロフェッショナルとして形になっているから自分の核になってるんです。時間もエネルギーも、ほかの何よりも費やしてますしね。
ORONO 基本的には自分の基礎となるものだし、今のところ成功も収めているし、すごくクールに感じているから続けていきたいとは思ってます。だけど、いつほかのことにもっと興味が移ったりとか、好奇心が強く湧くかもわからない。すでに今も、他の違うものにたくさん興味が湧いてるし。ただ思うのは、音楽一本に絞らず、こうして他のものに興味を持ったり他のことを体験することで、自分自身もやっている音楽自体も、もっと面白いものになるんじゃないかなって思ってます。
ー人生のあらゆることへの興味や体験が、音楽として昇華されていく。アーティストも一人の人間である限り、そういう経験そのものがSuperorganismにとっての貴重な血肉となっていきそうですね。実際にサウンドの方向性としても、今後変わっていく可能性はあると思いますか? “POP”という根底は変わらないとしても。
HARRY 本当にいろんな方向に興味を持っているから、そういうことはあるかもしれないですね。例えば、今回のアルバムに収録されている「Don't Let The Colony Collapse」も、ロンドンで記録的に暑い日があって、その一日にインスピレーションを受けて書いた曲だし。そういう自然現象などから影響を受けることもあるだろうし、社会で起こっていることかもしれないし、他の素敵なアーティストに出会うことで影響が受けるかもしれない。ただ一つ言えるのは、このバンドは誰もが音に対してもビジュアルに対しても、すごくオープンマインドで、いろんなアプローチややり方を許容する大きさがある。そこだけは変わらないことだと思いますね。
ー『FUJI ROCK FESTIVAL ’22』のライブも楽しませていただきました。最後、オーディエンスをステージに上げた演出はどういう経緯だったんですか?
ORONO 最初は私の友達とか家族を招くつもりだったんだけど、時間もあったしいろんな人をステージに上げちゃいました。別にプランしてなかったんですよ。
HARRY ステージから見た景色がすごく良かったから、ファンの人たちともシェアしたいと思ったんだ。
ーあの光景を見て、バンドもオーディエンスも、会場にいる全ての人がSuperorganism(超個体)なんだと感じました。
HARRY その解釈は合っているね。もう本当にそこにいる人たち全員と一体になりたかったんだ。将来的には、世界全体をSuperorganismな社会にしたいからね。
ー実際の友達も含めて、ステージ上でみんなのことをすごく“Friend”と言っていたのが印象的でした。“Friend”とは、ご自身にとってどういう存在ですか?
ORONO 私にとってすごい重要な存在。私にとっての全て。今回作ったアルバム『World Wide Pop』そのものも、フレンドシップがすごく大きなテーマになってる。
HARRY 歳を重ねるにつれ、よりたくさんの友達を作りたいと思っているんだ。その関わりがたとえ短い時間だったとしても、多くの人たちが自分の人生にポジティブな変革を与えてくれていると思っているから。人生は一度っきりしかないから、とにかく楽しまなきゃって思う。
ー友情の醍醐味は何だと思いますか?
HARRY シェアだね。いろんなことを友達とシェアすることで、人生はより面白くなっていくと思う。
ー誰かと友達になるには、どんな形であれ、最初はコミュニケーションを必要とすると思います。とはいえ、みんなと直接的な会話をすることはできない。世界のみんなと友達になれたら最高だけど、物理的には不可能。その状況において、音楽がサポートできることはあると思いますか?
ORONO 音楽ももちろんそのサポートにはなるし、アイコンタクトとかのボディランゲージもコミュニケーションの一つ。ステージに立っている時は、オーディエンスみんなを友達だと思って歌ってるよ。
ーよくインタビューで、Superorganismはあくまで“自分たちが楽しんでいるだけ”とおっしゃっています。そんな自分たちを見て、ただフォローするだけじゃなく、あなた自身の人生もしっかり楽しむべきだと。そのメッセージはすでに広く伝わって、自分の人生に対して行動に移している人も多くなっているのではと感じます。そういう形で、結果的にその人の人生を、少し前へ進めることになったことへの感動はありますか? どうのように感じていますか?
ORONO ディープクエスチョンだね。
HARRY 僕自身は「僕たちの音楽を聴いてハッピーになりました」とか「つらい時期を乗り越えることができました」って言ってもらうと、本当に嬉しくて自分自身をすごく誇りに思う瞬間なんです。でもそれって「さぁ、これで君たちの人生を変えてやるぜ?」みたいな気持ちでやっているわけでもないし、意図してやってることでもない。歌詞も、自分を再発見するために自身と向き合っているだけで、そこに誰かの人生を変えたいという想いはないんです。でもね、一つすごく覚えているエピソードがあって。テキサスで若いファンの子たちと写真を撮ったり、サインしている間も、僕にひとこと言うためにずっと待ってくれていた50代くらいのファンがいて。「自分は洪水で家を失ったんだけど、それですごくつらい時に、君たちのファーストアルバムを聴いてすごく心が救われた」って。それは本当に数分間の出会いだったんだけど、ずっと心に引っかかっていて。何て言っていいかはわからなかったんだけど、すごく僕にインパクトを与えてくれた出来事でした。
ORONO “希望”っていうつもりはないんですけど、音楽自体は自分たちのため、自分たちらしく作っているけど、そういう“自分たちらしさ”自体もメッセージとして広がって、人をつかむんじゃないかと思っていて。そこから先の受け取り方は、正直相手次第。人によって受け取り方は違う。だけど、めっちゃウザく聞こえるかもしれないけど、自分たちのためにやっているからこそ、そんな風に“希望”を持ってくれる人たちがいっぱいいるんじゃないかな。
PHOTOGRAPHY : KYOHEI NAGANO
INTERVIEW : SADANORI UTSUNOMIYA
TRANSLATION : YUMI HASEGAWA