ロンドンを拠点に活動するオルタナティブポップデュオ。イギリス名門芸術大学のギルドホール音楽演劇学校で出会ったGeorgia ElleryとTaylor Skyeによるサウンドは、既存のスタイルを解体して再構築するような混乱極めるポップネス。2022年9月にデビューアルバム『I Love You Jennifer B』をリリース。マスタリングはLed ZeppelinやLana Del Reyらも手がけてきた名エンジニアJohn Davisが担当している。
ーJockstrap結成の経緯を教えてください。
Georgia Ellery(以下Georgia) Taylorとは音楽学校で出会って、作曲のクラスが一緒だったの。私たちの周りには、音楽作りをはじめクールなことをやっている人たちがたくさんいて刺激を受けてたんだけど、そのおかげで私自身も曲を書くようになって、プロデューサーと作業したいって思うようになった。そこでTaylorに頼みたいと思ったの。彼の作品をいくつか聴いた時、私が子供の頃から聴いてきた大好きな音楽を感じることができたから、Taylorとならうまくいくって確信が持てたの。その後の流れは早かった。彼にデモを送って、その上からTaylorが自分の音を乗せたものを送ってくれて、それがクールだったから、そこから一緒に音楽を作るようになっていったの。
ーパートナーがどういった人物か教えてください。
Georgia Taylorはすごく熱心。そして優しくて、才能がある。
Taylor Skye(以下Taylor) Georgiaは、賢くて、思いやりがあって、趣味がいい。アイデアを思いついたらすぐ実行するし、すごくいいビジョンを持ってると思う。
ー音楽以外で影響を受けたエンタメは?
Taylor Georgiaはゲームの『あつまれ どうぶつの森』が好きなんだ。
Georgia 日本のゲームだよね。子供の頃からプレイしてて、アルバム曲の「Debra」は、実はどうぶつの森について歌っているの。自分でコントロールして色々築き上げていくのが楽しいんだよね。森でみんなと話したり、家を買って建てたり(笑) それにあのゲームのとたけけの音楽も好き。ゲーム内のラジオで流れてくる音楽はとたけけの音楽で、そのレコードを買ったりするの。誰がサウンドを作ってるのか知らないんだけど、あのテーマソングは大好き。私たちがミックステープ『Beavercore』に入れたピアノの曲にちょっと似てるんだよね。
Taylor 僕はMatthew Barneyのフィルムシリーズ『クレマスター』。すごく影響を受けたし、本当に素晴らしかった。あの映像に出てきた場所を、これからたくさん訪れてみたいんだ。彼は、実はBjörkとの間に子供もいる。すごく興味深い人でアスリートでもあるんだ。
ー待望のデビューアルバム『I Love You Jennifer B』がリリースされましたが、ここまでの道のりはいかがでしたか?
Taylor ゆっくりと登山しているような感じ。2、3セット曲を作ったら休みっていうのを繰り返してた。Georgia 前のEPの時も結構時間がかかったし、アルバムはその倍だから、時間も倍かかるかなとは思ってた(笑)
ー発売までの3年間で変化したことはありますか?
Taylor パンデミックがあって今回はリモートで作業した。あとは、Georgiaがギターで曲を書くようになったのも新しかった。
Georgia ほとんどの曲をTaylorから書き始めたのも変化。彼が書いた曲の上から私が作業したの。これまでは、その逆だったんだけど。
ー自分たちや周りで変化したことはありましたか?
Georgia それぞれ引越しをしたのは変化だったかも。住む場所って音楽にも影響すると思うし、私たちは自分たちの部屋で音楽を作っているしね。
Taylor 僕も一回故郷のハーボローっていうミッドランドにある街に戻ったんだ。あと、2人とも学校を卒業したんだけど、少なくとも僕には大きく影響してると思う。毎日大学の勉強をしなくていいっていうのは大きな変化。
ーそれぞれ活動中のほかのバンドと比較してJockstrapはどういうポジションですか?
Georgia 私にとってJockstrapはメインのプロジェクト。時間を一番費やしているしね。
Taylor 僕も同じ。時間をかけてそうなっていった感じだね。あとGeorgiaと曲を作ると、すごくユニークな音楽が出来上がる。何て呼べばいいのかわからない音楽が出来るのが、このプロジェクトでもあるかな。
Georgia Taylorと曲を作らずに他の活動だけやってたら、こうしてフルタイムのミュージシャンにはなっていなかったかも。アルバムがうまくいって落ち着いたら、ほかのプロジェクトもまた始めたい。やっぱりバランスって大切。私はいくつかのことを同時にやるのが好きだから。
Taylor 誰かが自分と何かプロジェクトをやりたいってなったらそれも大歓迎。制限は設けていないから。
Georgia 色々やっている方が音楽は充実するし、よりクリエイティブにもなれる。出来上がった音楽を聴いてショーを観てくれてたら、より充実感や達成感を感じることができるかな。
ー今回のアルバムを統括して表現してください。
Taylor 僕たちの音楽のコンピレーションみたいな作品。エレクトロニックとアコースティックをミックスした、幅広いスケールの大きな作品だと思う。色々な要素のバランスが取れた曲を作るのが目標だったから、どうやったらバランスが取れるのかずっと考えていた。それも制作に時間がかかった理由の一つ。バランスを取るには、自然の流れや勘みたいなものも必要になってくるから、ベストなコンビネーションが自然に生まれるのを待たなければいけないときもあったからね。
INTERVIEW : SADANORI UTSUNOMIYA