#006-ØMI

#006-ØMI

ØMI 

Instagram:@omi.cdl

 

2010年、三代目 J SOUL BROTHERSのボーカルとしてデビュー。2017年、HIROOMI TOSAKAとしてソロ名義での活動をスタート、2018年には自身初となるソロアリーナツアーを全国11都市で23公演開催し、24万人を動員した。2019年にはLDHソロアーティスト初の海外単独公演を開催。2021年にØMIへと改名。自身プロデュースのプロジェクト『CDL entertainment』を発足、BTSらが所属するHYBEとタッグを組みガールズプロジェクトをスタート。2022年2月、アルバム『ANSWER...』をリリース、2年ぶりとなる全国ツアーを開催。

 

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「先のことは考えず、今の全てを出し切る」。三代目 J SOUL BROTHERSのボーカル登坂広臣としてはもちろん、ソロプロジェクトØMIとしても、これまで常に中長期的なビジョンを描きながら活動をしてきた彼。そんなØMIの一つの集大成と位置づけたサードアルバム『ANSWER...』を引っ提げた全国ツアーに対して、冒頭のような言葉を残した。明らかに今までとは違うフェーズに突入している彼の現在地を、ツアー中盤に差し掛かる2022年3月下旬に、独占シューティングとロングインタビューで迫った。

 

ー今回、サードアルバム『ANSWER...』に関してのことはもちろん、折り返しを迎えたツアーのこと(※取材時は3月下旬)、そしてプライベートなことも少しおうかがいできればと思っています。ではまず、ツアー中盤まで来ましたが、今のお気持ちはいかがですか?

今回のツアーは、このご時勢ですけど無事に折り返しまで来ることができたので、安心しつつもまだ楽しみが残っている、みたいな感じです。

 

ーパンデミックの影響もあり結果的に2年間のインターバルができてしまったと思いますが、実施前のイメージと、実際やってみて感触が違った部分はありましたか?

グループでのライブの時だと、ツアーがスタートした頃と途中では結構セットリストが変わったり演出が変わったりっていうのは多々あるんですけど、自分のソロの場合はそれがほとんどないんです。初めてやった2018年のソロアリーナツアー『FULL MOON』の時も、最初に決めたセットリストからそのまま変わることなく最後までいって。それは、楽曲のカラーや映像のイメージ、ステージング、演出とかを含めて全部そうなんですけど、ライブを作る上で自分の中である程度の想像が頭の中に前もってできているからで、逆に言うとツアーの初日がスタートするまで、リハーサルまでにいかに照明などの演出を含めた、イメージする世界観を創り上げることができるかに時間を要しているんです。なので、いざスタートしてしまうと、僕のライブは特に変更することなく進んでいくんです。今までの経験上でもそうで、その点はやっぱり今回も同じ感覚ですね。もちろん自分の中でしっくりきていなければ変える部分もあるんですけど、でもその感覚がなく今のところやってこれているので。スムーズと言えばすごくスムーズですね。

 

ーMVなどの映像作品を観ていても感じるんですが、ØMIさんのクリエイティブはサウンドと共にビジュアルのイメージが明確に浮かんでいるんだろうなと。音と映像が基本的にセットなので、ライブ演出などとの相性も当然良いですよね。楽曲制作時にビジュアルイメージがすでに浮んでいるから、早い段階でステージングも思い描けている感じがします。

そうですね。曲を作る時もそうなんですけど、逆にこういうミュージックビデオを撮りたい、こういう映像を撮りたいというイメージから曲が湧くときもあります。

 

ー楽曲より先行してビジュアルが浮かぶことも多いんですか?

もちろん基本的には曲ができてから、曲の世界観でミュージックビデオを撮りたいって想像するんですけど、逆にビジュアルが先に見えて曲ができるということも多いですね。作品を制作するときも、ライブを制作するときも、イマジネーション的な部分はいろんなところからインスピレーションを受けます。映画を観ていても、映画の中の演出をライブでやれたら面白いなとかヒントは常にたくさんある。そういう感覚でものづくりをしています。

 

 

ー昨年本格始動したご自身がプロデュースするプロジェクト『CDL entertainment』(以下、『CDL』)も、事前にいろいろとイメージは浮かんでいた感じですか? 今まさにZ世代の大規模オーディション『iCON Z〜Dreams For Children』での、ガールズグループのオーディションから始まっています。

エンタメやものづくりだけじゃなくて、自分のキャリアとか自分のライフスタイル、もっとプライベートな部分を含めてイメージしています。何歳の時にこうなっていたいなとか、何年後こうしていたいなっていう自分を想像して、理想像みたいなのがあるので、それをするためには逆算して今何をやらなきゃいけないんだろうっていう考え方。『CDL』を作ったのも、10年後このプロジェクトが自分の想像する形になっていてほしいから、今このタイミングで立ち上げたいと思ったし、立ち上げてからのビジョンも含めてイメージしていました。常に今目の前にあるものに手をつけているんじゃなくて、どちらかというと、先に想像している未来像があるからこそ、逆算して今何をすべきかを考える癖があるというか。

 

ーライフプランとしての長期的なビジュアルイメージもあって、その節目ごとにやるライブにも、短期的なビジュアルイメージを持っているということですか?

そうかもしれないですね。結局ライブも、お客さんがいて初めて成り立つものだったりするじゃないですか。そうなったときに、自分のライブを最後まで観終わったお客さんがどういう気持ちで帰っていくのかな、っていうのが結局ゴールであって。お客さんに自分のエンターテインメントを観てもらって、満足した気持ちで帰ってもらうためにはどんな内容にしようかなっていう逆算の考え方ですね。

 

ーだからこそ、長期的な逆算もあるし、短期的なフェーズごとの逆算もあるということですよね。

そうです。だから、ものづくりに対して基本的に迷いがないんです。

 

 

ーソロアーティストとして3つのアルバムをリリースして、一つの集大成を迎えてのツアーとなり、ご自身は35歳を迎えられたわけですが、いろんなタイミングがハマってきている印象はありますか?

年齢は単なる数字だとはもちろん思っているんですけど、振り返ってみるとアーティストとしてデビューしてから12年、ソロアーティストとしての活動も5年やってきて、自分の年齢も35になるのかと思うと、やっぱり自分のキャリアを思い返すこともありますね。表舞台に立つ立場として、このタイミングで『ANSWER...』という作品を出してアリーナツアーをまた全国で回れているっていうのは、何年か前の自分からしたら理想の一つではあったんですよ。ちゃんと作品制作を経て、もう一度アリーナツアーを回っていたいなっていうのはイメージしていたんで。だけどLDHっていう組織自体がパンデミックの影響を受けて、いろんなものが後ろ倒しになったり中止になったりして。本来であれば、昨年やりたかったこともありますし。でもそういう影響を受けた中でも、『ANSWER...』ツアーは年が明けた2月からすぐスタートさせたい、どうしてもこのタイミングでやりたいっていうのは僕の要望として出させていただきました。

 

ーそれはご自身の人生としてのタイミングも含まれていた? コロナで時期がずれた分の調整もしているという感じですか?

もちろんソロアーティストとしても活動させていただいていて、この活動においての自分のビジョンはある程度見えている部分はあるんですけど、一つの大きなキャリアとしてはもちろんグループ=三代目 J SOUL BROTHERSがあって、それは僕だけのグループじゃなく7人組のチームなので、一人一人の考え方や人生があるじゃないですか。だから当然、僕のタイミングだけでこうしたい、こうしようみたいなのはできない。その理想像を伝えたりはするんですけど、グループとしての歩み方というのもありますからね。昔は“とりあえず7人で前進あるのみ!”みたいな、がむしゃらなマインドで必然と足並みは揃っていたんですけど、やっぱりみんなそれぞれ年齢も重ねて大人になってきて。それぞれのライフスタイルも七人七色にあって、さらにエンタメに対する考え方だったりとか、活動するスタンスもやっぱりそれぞれの歩み方になっていくので、このグループを続けていくにはみんなで歩幅を合わせるしかないなと思っているので。そこはソロとはまた違う考え方での歩み方になるのかなって最近すごく感じています。

 

ーご自身のスタンスやアーティストとしての今後のフェーズでは、『CDL』も含めやはりグローバル化も意識されていますか?

今回のアルバムでBTSのSUGAさんとご一緒させていただいたのも、やっぱりグローバルという意識はありました。世界っていう明確なものを描いたわけじゃないですけど、グローバル市場でずっと戦っている彼とご一緒させていただいたものが、必然と世界に広がったっていうのも含めて。同時に、表舞台に立つ一人のアーティストとして、もっと早い段階でグローバル市場にトライしたかったなという、少し残念な気持ちもあるんです。今でこそ世界へ挑戦する、みたいなことって言われるようになったけど、僕らがデビューした10年近く前にそういう状況だったかって言われるとそうじゃなかった。グローバルな活動をしたいなっていうのは当時から思い描いてはいたけど、でもまずは国民的グループになることが僕たちにとっての最重要課題で目標でもあったので。今でこそ、ありがたいことにそう呼称していただけることは多いですけど、そう呼ばれるようになるまでに有した時間というのは10年近くかかったわけで。今グローバル化ってことが普通に言われる時代になってきたので、そこに対してはアーティストとしてもっとトライしたかったなっていう思いはありますね。

 

ーそこには時代の流れもありますからね。そういう意味では、今の後輩たちは最初からグローバルなスタンスでやれていいなと思いますか?

いや本当に、そこは羨ましいなって素直に思いますね。それこそ今『CDL』でオーディションをやらせていただいている中で、自分がプロデュースするチームに自分が成しえなかったことや夢を乗せて、彼女たちと一緒にグローバルへの挑戦をしていきたいですね。自分自身が行けなかったところに、違った形で挑戦するというか。

 

ー託す感覚にも近いですね。

プレイヤーとは違った形で、そこにトライするという夢を託している感じですね。また一つ、嬉しいことに出会えたという感覚でやらせていただいています。もし本当に彼女たちがグローバルで活躍できるチームになったときには、自分の夢が叶ったって思うかもしれないです。

 

 

ーこれまでグループで夢を描いていたことと、ソロになり自分自身の夢を描き、さらにプロデューサーとして後輩たちとともに夢を描く……ご自身に対するセルフプロデュースの領域もどんどん拡がったことで、達観して自らを見ることも増えたと思います。いくつかのフェーズでの活動を経て、ご自身はどういったことが向いていると思いますか?

今ツアー中だというのもあるのでなおさら感じているんですが、やっぱりステージに立って人前でパフォーマンスすることが、自分はシンプルに好きだなって改めて思いますね。でも、今達観した目で視野を広く持って三代目 J SOUL BROTHERSの方向性をいろいろ提案させてもらったり、ガールズグループのプロデュースをオーディションから入らせてもらったり、自分のソロ作品をセルフプロデュースさせてもらったりっていうことも同時に楽しいんです。だから、自分はどっち向きなんだろう? って考えたりもするんですけど、どちらがというよりはプロデュースすること自体が、やっぱり好きだなと思いながらやらせていただいていますね。

 

ーお話を伺っていても、ビジョンやビジュアルイメージが浮かびやすい方だと思うので、プロデュースは絶対向いているんだと思います。それぞれの活動はチャンネルを切り替えている感覚ですか?

そうかもしれないです。もちろん僕の体は一つなんで全部がイコールで繋がっているのは間違いないんですけど、チャンネルを変えていかないとやっていけないですね(笑)。グループでも、なんで俺がここまでやんなきゃいけないんだとか思っちゃうことあるんですけど(笑)、気づいた人がやるべきだし、自分がやらないと前進しないこともあるし。もちろん僕だけじゃなくてみんなアイデアを出すんですけどね。そういう意味では、その立場ごとにきっちりチャンネルを切り替えて他の動きに関する思考を止めていかないと、今のこの環境は無理かもしれないです。

 

ーでも結果的に、それぞれがいい影響を与え合うこともありますか?

僕、プロデュースって偉そうに言っているんですけど、結局自分が経験したことや体感したことしか、今オーディションを受けている子たちにも伝えられないし、自分が経験してないことを想像で伝えてもやっぱり説得力がない。でもそれこそが、自分がプロデュースする強みでもあると思うんです。実際に経験した者から教えてもらえるっていうメリットだと思っているので、そういう感じでやっていますね。

 

ー今まで後輩をプロデュースすることはなかったと思いますし、ましてや10代の女の子たちを相手にしているわけですよね。そういう育成部分での難しさは感じますか?

めちゃめちゃあります。子供でもおかしくない年齢ですからね。一番下の子は13歳とかなんで。普通に自分が早い時期に結婚して子供ができていたら、それくらいになりますからね。年齢がかなり下なので、世代も違うしガールズだし共通の話題も大してないと思うんです。もちろん、愛情を持ってプロデュースして育てるっていうのは間違いなくそうなんですけど、でも情だけで上手くいく世界じゃないっていうのは、自分が身を持って知っているので。情ですべてが上手くいくわけじゃないし、情で曲が売れるわけじゃないし、情で人気を得られるわけじゃない。そこはある意味、自分はプロデューサーとして良い意味でのフィルターをしっかり置いて彼女たちと接していますね。その分、信頼するスタッフたちに任せて、愛情を持ってメンバーに接してもらうというチーム作りとしての役割分担は意識しています。

 

ー全体像を捉えながら自分のポジションを考えての動き方ですね。

自分一人対彼女たちだったら持たないと思います。経験者として、プロデューサーとして、自分が特化している部分をしっかりやる。細かいパーソナルな部分っていうのは、あまり知りすぎると情で動いてしまう可能性もあるので。

 

ーそんな若い世代のピュアな子たちを見て思うところってありますか?

たくさんあります。思い返すことが多いですね、自分はこうだったなとか。

 

ー中学生ぐらいだとご自身もまだ何も動いていない時期だったわけですよね。

もう自分とは違い過ぎて。良くできているなと感心します。だって自分がその年齢の頃なんて、もう遊ぶことしか考えていないし、いかに毎日楽しく過ごすか友達とわいわいするかしかなかったですからね。将来の夢って大して考えてもいなかったし。小学生くらいから“アーティストになる”っていう明確な目標を持って、しかもものすごい高水準のスキルで頑張ってきて。この段階ですでに積み上げてきたものを一定の形として持っているっていうのは、もう自分の時とは全然スタートが違う。すごいなって素直に思いますし発見ばかりです。「すげえな、こんなことできんだ」って。あと自分もオーディション出身者なので、その姿を見ていると初心を思い出しますね。ああそうだよね、こういうこと辛いよねとか、俺もこうだったなとか。

 

 

ーご自身がオーディションを経てデビューした頃と比べると、20歳前半くらいの頃に「鎧を纏っていた時期があった」といくつかのインタビューでもおっしゃられてますよね? 強くなければいけない、みたいな。あの時の気持ちと今の気持ちの違いはなんでしょう?

結構違う気がしますね。そういった気持ちが全部に出ていたんですよね。作る音楽ももちろんそうだし、変な話、ファッションもそうだったかもしれない。ステージに立つ心構えとか、ステージに立っている最中の考え方とか。そういったところすべてにおいて違う気はします。わかりやすく言うと、尖っていたというか。でもそういう尖っていた時代があったからこそ、今の登坂広臣っていう存在ができたと思うし。今の自分を形成する上では間違いなく必要な時期だったと、今だから笑って言えますね。

 

ー結局そういう時期も糧になっているということですよね。でもそんなに尖っていたんですね(笑)。

当時はなんかもう、いろんなことに反発していました。わかりやすく「わー!」ってなっていたわけじゃないけど、心の中でいつも疑問に思っていました。何でこれをやる必要があるんだ、なんでこういう思いでやらなきゃいけないのか、なんで自分が良しと思っている音楽とファッションだけやっちゃいけないんだろう、とか。それを普通にファンは観れば良くない? みたいな。それで好きかどうか判断してよ、っていう感じは正直ありましたね。

 

 

ー今、自分がプロデューサーという立場で、当時の自分がいたらどうアドバイスをしていますか?

あ、でも全然ほっときます。それが明らかに本人のキャラクターと違っていたり、その人の持っている良さをなくしてそっちに行っているのであれば、もちろん正すことはあります。今思い返しても、もしかしたらそういう時期があったからこそ同性のファンがすごく多く付いてくれたのかなって思うんです。ライブツアーをやっていても、会場見たらすごい男性のファンが多いので。あの時のファッションだったり音楽だったりのスタンスがあってそれを発信していたからこそ、共感してくれた男性ファンが多くいてくれたのかなと。だからそこにポジティブな部分があるのであれば止めることはない。でもそうじゃなくて、本当に本人の素顔のキャラクターと逆を行っている感じだったら、それが自分がプロデュースする側で見えたら軌道修正は絶対しますね。

 

ーその頃思い描いていたアーティスト像と今とでは違いはありますか? 特にMATE(ファン)との向き合い方も含めて。

違いますね、やっぱり。今だからこそ思うんですけど、さっき話したような部分ってすごく狭い中でいろいろ考えて動いていたなとは思います。でも当時の自分からしたら、めちゃめちゃでかく動いているつもりだったんです。ファンの人に対しての考え方もそうだし、なんでもっとこういう目で見てくれないんだろう? とか、音楽に対しても同じような考え方は常に持っていました。今思うと「すげー狭い中でやっていたな、自分」っていう感じだけど、たぶんどうしていいのかわかんなかったんだと思うんですよね。右に行っても壁があるし、左に行っても壁があるし、前を向いても壁があるし、ちょっと後ろに引いてみても壁があるし……。

 

ー窮屈さを感じていたんですね。

今振り返ると、そういうちっちゃい箱の中でがむしゃらだったんだと思いますね。

 

ーいつ頃がそういう気持ちのピークでしたか?

2016年〜2018年辺りです。

 

ーソロデビューの直前ですね。

そうですね。ソロデビューした時も、わりとそういうふうに思ってはいたんですよ。世の中的に言う、良い曲とか良い歌詞とか、そういうのは全く意識しようとは思わなかった。変な話、ヒット曲を作ろうなんて思っていなかったというか。三代目 J SOUL BROTHERSのボーカルを経てソロデビューするってなった時に、自分のやりたい音楽と自分の言いたいリリックを、とにかく言ってやろう、みたいな感じだったんです。やっぱりグループだと求められることも違うから、ソロになって、自分の恋愛経験を赤裸々に歌詞にした曲もたくさんあるし、それこそ自分自身についても、さっき言ったみたいに前も横も後ろも壁、みたいな時の思いとか、あとファンに対する思いとかを痛烈な言葉で描いた曲もあるし。ちゃんとアーティストとしてのメッセージを、作品を通して伝えたかった。だから、爽やかに世の中的にウケそうなことをするっていうのは、ハナっから狙っていないところからスタートしている。最新作の『ANSWER...』も、不思議とそのソロデビューの頃と気持ちは同じなんですよ。ファンの人以外にも聞いてもらいたいっていう気持ちもあるんだけど、そこに向けて作っていないというか。自分の思いだけ、自分の思っている言葉だけをファンの人が受け取ってくれればいいっていう考えで作ったアルバムなんです。スタートした時と今も一緒なんです、結局。

 

 

ーエネルギーの質は違えども、その根本にある思いは一緒ですね。

ただ当時は鎧を着ていたっていうか、自分自身が肩肘張ってスタートさせた思いと、今いろんなことに気づけて、こうやってファンの人に対しての思いをたくさん綴った思いの、その“ものづくり”ということ自体に対する思いは、結局何も変わっていないっていうのは不思議です。

 

 

ー結局そこに立ち返ってきてるんですね。今回のアルバムを聴かせていただいて、できるだけストレートに思いを伝えようとしている楽曲が多いなと。それこそ纏っていた鎧を脱いで、できる限りきちんと伝えたいっていう思いがすごく強まった結果なのかなと思いました。それはやはり、このコロナ禍の影響も大きいですか?

誰も予想していないことだったわけじゃないですか、こんな世の中になるなんて。当たり前の日常が奪われてしまったりとか、そういった出来事を自分自身も直接感じた時に、今ある環境も今いるファンの人たちも、それがいつまでも永遠に存在しているわけじゃないなって。自分自身も、いつまで歌えるかなんてわからないわけじゃないですか。そういうのは今回のパンデミックで気づかされた部分でもあるので、今伝えられる言葉、今届けたい言葉だけを伝えないとって。今言わないでいつ言うのっていう感じで、シンプルに原点に戻らされたというか。自分自身と向き合って作品を作った時に、自分の弱さみたいなものを見せるのはあんまり好きなタイプでもないし、今まではそういうのをダサいって思っていたんですけど、でも自分が12年間やってきた中で、ずーっと応援し続けてここまでついて来てくれているファンの人たちがいるからこそ、自分はこうやって大きなステージにずっと立っていられるんだなって。当たり前のことなんですけど、そんな当たり前に気づいて、それをちゃんと言葉にしたいって思ったし、そういう人たちに対して弱さだったり、自分が感じている孤独だったり怖さだったり、痛さみたいなものも作品を通して見せるのは良いんじゃないかなってすごく自然と思えたので。それを今回はシンプルにわかりやすく、自分の心の中の答えとしての影の部分と、自分が持っている圧倒的なポジティブな光の部分も両面見せることによって、両方自分のことだよっていうのを改めて応援してくれる方々に伝えたかった。

 

 

ー今までファンの方たちが複数人の塊みたいな存在だったのが、今回の作品で“You”という言葉を多用されているのを見ても、本当に一人一人に対して伝えたいっていう感覚が強まっているんだろうなと。

さっき言ったみたいに、このアルバムがファンの人にだけ届けば良いって正直思っているのは、大衆に届けとか、塊に届けっていう感覚じゃないからそう思うんですよね。もちろん音楽をやっている立場からしたら、いっぱい売らなきゃいけないし、幅広くどんな人にも聴いてもらえるのが音楽ビジネスとして当たり前に必要とされることだけど、でも今回の作品に関しては正直そんなことどうでもよくて。

 

ーここまで赤裸々に思いを綴れているのも、やっぱりファンの方たちを信頼しているからですよね。相手のこともわかっているから、受け止めてくれる相手だと信用しているからその弱さを見せられるというか。

本当にそう思います。これが本当にデビューして5、6年とかで、相手のことも自分のこともわかっていない中での関係性だったら見せられていない。だから今は一人一人のファンに対して、パーソナルに向けて発信したいっていうのがありました。もし自分がまだ夢をもっと叶えなきゃいけない立場だったら、そうは思わなかったかもしれないですけど。最近よくライブのMCのときにも言ったりしているんですけど、今の目標とか、達成したいこと、手に入れたいものって何ですか? って質問されても思い浮かばないぐらいな感じなんですよ。

 

ー満たされていると?

はい。グループとしても、三代目 J SOUL BROTHERSって日本のトップアーティストの一組だと思っているし、自分たちとしても、一度日本の頂上に立った景色は見たしいろんなものを手にしました。それは自覚としてあるので、共に過ごしてくれたファンの人たちだからこそ信頼して全てを見せられる。これがまだ夢半ばだったら、グループとしてまだ何も成し遂げていなかったら、こんな風にはできなかったなって思います。だから本当にベタですけど、時間と歴史がそうさせてくれたというか。

 

ー楽曲を聴いても活動を見ても、ファンからするとたくさんいるファンの中の一人だと感じてしまうかもしれないところに、しっかりと“そうじゃないんだよ”と、より積極的にファンとの距離を縮めようとしているように感じますし、実際にそうしたいと思っているんだろうなと。

もちろん、何がアーティスト人生のエンディングかなんて、まだまだわからない部分はあるんですけど、全て永遠にあるものではないし自分自身もそう感じる部分はたくさんあるので、今やっているツアーもそうだし、定期的にやっているファンミーティングもそうだし、ファンの皆さんと過ごせる時間を大切にしたいと、改めてすごく強く思ってますね。ライブはありがたいことにできてはいても、まだコロナ禍だから直接会うってなかなか難しいので、こういうリリースをさせてもらった時に、オンラインでコミュニケーションを取れる場所を作ったり、より多くのファンの人と接する時間は、今自分がアーティストとして活動する中で一番真ん中に置いています。それこそさっきお話があったように、“たくさんいる中の一人”っていう感じがあるかもしれないですけど、距離をもっと近くに感じてもらえるような、そういう時間にしていきたいなと思っています。

ーやっぱり『ANSWER...』は、そういう思いをすごく感じるアルバムだと思います。さらに本日0時(3月28日)アルバム未収録曲「ANSWER ~LIVE FOREVER~」が配信されました。この曲を聴いてアルバム収録曲の伏線も回収されて、改めて集大成だと思いましたし、だからこそ切なさや寂しさも感じました。

この曲はもともと制作する予定はなかったんですよ。『ANSWER...』というアルバムを出させていただいて、そこで自分の答えは完結したつもりだったんです。で、ステージに立ってファンのみなさんに答えを届けるっていう思いのもとツアーを回って来て。でもその中で芽生えた気持ちだったり、湧き上がって来たアイデアだったり、改めて生まれた願望もあって。自分自身が新たに感じた答えの一つの側面を表現しようと思うと、やっぱり自分は音楽で作るしかないなって。それで、このアルバムをずっと一緒に作っているプロデューサーチームにアイデアとして投げたら、どんどん一緒に歌詞もメッセージも膨らんできて。アルバムの伏線回収みたいな部分も含めて、僕のイメージが一つになっていって……。自分の中のエンタメを作るテーマとして、一本の映画を見終わったようなライブにしたいっていう思いがあるんです。そういうイメージも含めて、今回のような楽曲になりました。ライブのエンディングでファンの皆さんがこの曲を聴いた時に、何か心に残るものを持って帰ってくれたらいいなっていう思いで作りました。だから「ANSWER ~LIVE FOREVER~」にはどんなメッセージを込めていますか? って聞かれると、『ANSWER...』を引っ提げたツアーで立っているステージから見えた景色、ステージに立っている時の気持ちで、それは新たに感じた気持ちでもあるし自分の願望も入っている。でもこれは大げさじゃなく、一種の“さよなら”を告げる曲でもあるっていう感覚でした。今の素直な気持ちでもあるし、でもどこかで、これをもってさよならをするっていう気持ちでもあるし。そんな、いろんな気持ちが入っている楽曲かな。

 

ーすごくエンドロール的なので、もっと観たいという思いが募ってくる。それと同時に終わりの寂しさに切なくなる。でも今のお話を聞いた限りでは、寂しくなりすぎず安心してていいよ、という感じですかね。

ネガティブなさよならではないし、もしかしたら『ANSWER...』というものを見つけた自分に対してさよならって言っているのかもしれない。もちろん『ANSWER...』の終わりでもあるし、エンディングの感じもあるんだけど、自分にとっては自分とさよならした後のスタートの曲でもあるような気がするというか。だからなんか、複雑ですね。

 

 

ーでは、現時点でツアー後のイメージは描いていますか?

今までは、何年後かにこういう地点にいたいとか、次の作品はこうだとか、次はこういうことをやろうって、常にずっと何年も先のイメージを思い描いてやってきたんですけど、今回は『ANSWER...』のツアー後や今後の作品のビジョンは思い描いてないんです。あえて思い描かないようにしているっていうのもあるし、今はこのステージ上で全てを出し尽くして、とにかく最後までやり切るという思いが強い。無事にやり切った後の自分ってどんな感じなんだろう、どんなテンションなんだろう、みたいな感じですね。

 

ーそれはØMIさんにとって、今までとは違う新しい感覚ですね。

そうですね。今までは、このツアーが終わったら次こういうステージやりたいなとか、次こういう曲で、ソロとしてカムバックしていきたいなとか、いろんな考え方があったんですけど、ある意味今回は、自分自身と向き合って出し尽くした答えの作品をリリースして、そのツアーを回っているので。じゃあ次何やるんですか? って言われると「いや、わかんない」って感覚です。それこそ、今日出した「ANSWER ~LIVE FOREVER~」がこれからの新たなスタートとなる曲に聴こえるのかどうかっていうのは、自分自身もすごく楽しみです。

 

ー本誌が発売するころにはツアーは終わっているので、どんな感じになってるのか楽しみですね。

確かに。繰り返しになりますが、この先何をするのかみたいなことは決めたくないし、このステージで全てを出し尽くしたい。この雑誌が発売するころにツアーが終わっているのであれば、現時点での自分としては、この『ANSWER...』というものに対して、何も悔いなく終わっている自分であってほしいなって思っています。

 

 

ソロアーティストØMIとしてその位置にいる一方で『CDL』のプロジェクトも始まります。『CDL』の中では音楽以外の何かを広げる可能性もありますよね。

もちろん、今やっているオーディションのことに関してもそうですし、『CDL entertainment』ってカルチャーを発信していくような場所にしたいなと思っているので、これからいろんなクリエイターとかいろんな企業とか、本当に自分自身が面白いと思える人たちと一緒に発信していきたいですね。例えば、それがファッションかもしれないし、レストランとか食の領域だったりするかもしれないし。でもそこの真ん中には、ちゃんと音楽とエンタメが存在していて。ビジネス的観点から言うと、いろんなプランを考えています。もっとこういうとこと、こういう取り組みをしてみたいなとかビジョンはたくさんあります。でもそれを、一気に手をつけるのは難しいですけど。

 

ーそれは新しい挑戦になりますね。

一個一個、丁寧にやっていきたいと思っています。ただ 『CDL entertainment』は、アーティストの居場所、音楽を作る場所、もっと言うと今やっているみたいに育成の場所かもしれない。カルチャーを発信する、いろんな複合的なエンタメの場所であってほしいですね。

 

ー多角的にカルチャーが動き出すのを想像しつつ、その中で改めて音楽とはどういう役割を担うと思いますか?

音楽がなかったら、そもそも『CDL entertainment』なんてやらないと思います。もしかしたら今後、音楽との向き合い方が変わるかもしれないじゃないですか。今までは自分でステージに立って、歌って、制作もしてっていう立場だったけど、自分がプロデュースさせていただいた音楽を、自分がプロデュースした子たちがパフォーマンスして、それが世に出ていくっていうのは自分にとっても新しい形の一つだと思うし、そういったことも含めて、やっぱり音楽を軸にしないと成立しないっていうのはあります。

 

 

では、ご自身にとって音楽とはどういう存在ですか?

何でしょうね……もう全部でしかないというか。ファンの皆さんと出会わせてくれたのも音楽だし、今の自分っていう存在、世の中の人に知ってもらえている自分を作ってくれたのも音楽だし、グループの仲間と出会わせてくれたのも音楽だし。結局何ですかと言われると、ほんと全部でしかないんですよね。で、音楽を辞めるイメージもつかないんです。この先自分が歌わなくなって、プロデュースっていう側面も含めて、音楽に自分が携わらなくなるっていうイメージが沸かないんですよ、どう考えても。今までの自分の過去、今の自分、そして未来を想像してみても、やっぱり全てになっちゃいますね。

 

ーそれはコロナ禍で考えは深まりましたか?

嫌でも考えさせられましたよね、やっぱり。今まで音楽はいつでも届けられると思っていたけど、こうやって人と人とが会えなくなってしまったりすると、音楽ってやっぱりすげえんだなって。時間も国境も言葉も超えていくわけじゃないですか。それって唯一無二のものだなと思いましたね。なんか、人種も世代も国籍も場所も問わずに伝わっていくもの。それが音楽なんだなあっていうのは、今まではそんなこと思わなかったけど、このパンデミックで改めてその大きさに気づかされました。

 

 

PHOTOGRAPHY : AKINORI ITO (AOSORA)

STYLING : YASUHIRO WATANABE (W)

HAIR & MAKEUP : CHIE (H.M.C)

INTERVIEW : SADANORI UTSUNOMIYA

 

*このインタビューは2022年5月14日に発売されたVI/NYL #006のために実施されました。

*写真は全てアーティストからの提供です。

 

■VI/NYL