1989年生まれ。愛知県出身。2010年に三代目 J SOUL BROTHERSのパフォーマーオーディションに参加し、加入。2014年にEXILEに加入。2021年9月に『korekara』にてソロアーティストとして活動を開始。2022年10月12日に1stアルバム『The Chocolate Box』を発売し、11月よりソロツアー『Takanori Iwata LIVE TOUR 2022 THE CHOCOLATE BOX』をスタートする。アーティスト活動と並行して、俳優としても活躍。これまでに映画『去年の冬、きみと別れ』(瀧本智行監督/2018 年/ワーナー・ブラザース映画)、『パーフェクトワールド 君といる奇跡』(柴山健次監督/2018 年/松竹、LDH PICTURES)、『名もなき世界のエンドロール』(佐藤祐市監督/2021 年/エイベックス・ピクチャーズ)などで主演を務めている。
日本のトップ・アーティストグループの一員として、圧倒的なダンスパフォーマンスで人々を魅了し続ける岩田剛典。俳優としても、数々の話題作で主役を務め、存在感のある演技で作品を価値あるものに押し上げている。昨年ソロアーティストとしてデビューし、活動の幅をさらに広げることによって、“岩田剛典”は唯一無双の存在になりつつある。今回、初のソロアルバム『The Chocolate Box』のリリース、そしてソロツアー『Takanori Iwata LIVE TOUR 2022 THE CHOCOLATE BOX』を目前に、彼の音楽への向き合い方、全ての活動への想い、そしてフィロソフィーを語ってもらった。誌面には収まりきれないほどのその熱量は、エンターテインメントの未来そのものだ。
ー本日の撮影はいかがでしたか?
本当にいい写真の仕上がりで、すごく刺激的な楽しい撮影でした。無駄打ちもなくて、すごくプロフェッショナルな撮影だったなと思います。僕はただそこにいるだけで、あとは皆さんが全部やってくださったので。
ーVI/NYLはローンチして1年ぐらいなんですが、できるだけクリエイターの方たちの自由度に任せるというのを基本的なコンセプトとして制作しています。
アーティスティックな撮影で、本当に素晴らしかったです。
ーありがとうございます。ではまず、「岩田剛典」というのは、ご自身にとっての位置付けとしては、素の自分なのか、ブランディングしているのか、どちらですか?
めちゃくちゃブランディングしてます。なんというか、僕的にはブランディングせざるを得なくなってしまったという感じですね。表舞台に立つ時の立ち居振る舞いだったりとかをパーフェクトにこなしてきたかって言われるとそうではないんですけど、この12年ぐらいの間、自分はグループでの活動や、個人で今までいろんな映像作品に出演させていただいてきたこともあって、そういう仕事の側面から、なんとなくこういう人だろうなっていうのを世間に見せてきたと思うんです。あとは、僕のすごくパーソナルな部分、生い立ちだったりとか経歴みたいなところで、世間の皆さんが、僕ってこういう人なんだろうなと想像して、作り上げたものっていうのも結構大きくて。自分的には、そこは側面だけなので特に気にしてないんですけど、やっぱり世間は、そういう部分でいいとか悪いとか、色々意見を言いたがるというのも正直あって。不本意ではあるんですけど、自分の肩書だったり経歴だったり生い立ちだったり、そういった部分で評価されるのであれば、そこに見合った発言だったりとか行動をしないといけないなぁとか、そういうふうになってくるんですよね。それが窮屈ではないんですけど、それがきっとブランディングだと思うんですよ。たぶんパブリックイメージは、すごく優等生な感じだと思うんですけど、大きくそこから外れるような発言だったり行動は取らないように心がけています。あんまり意識はしてないんですけど、自然と自分を律してるところはあると思ってます。ただアーティスト活動をこうしてソロとして始めさせていただくことによって、やっぱり作詞をしたりする中で、自分の頭の中で考えている普段からの思想が、自然とリリックに表れているっていうのは、今回自分でも新しい発見でした。
ーソロ活動はいつごろからイメージしてたんですか?
具体的にやろうと決めたのは、コロナ禍か、もうちょっと前ぐらいですかね。身近なスタッフとかには、ちょっとずつこういうふうにしていこうと思うんだけど、みたいな話もしつつ、またメンバーには、意見を求めるというより、自分で決めて自分でちょっとやってみるので見ててくださいって感じでしたね。社長に対してもそうだったかな。
ーそういうときは、自分から社長にプレゼンをするんですか?
うちはもう本当にそれです! 自分でレジュメ用意して、あとはその目的とプランニングも全部用意して、こういう目的のためにこういうふうにトライしたいです、とか話をして。もちろんコストの問題とかもあると思うので。
ーコスト意識も含め、そこまでのプレゼンテーションが必要ということですか?
事細かにではないですけど、一応もう色々わかってるので、自分のやりたいことを実現するためには、どれぐらいの時間と、どれぐらいの人員と、どんな感じでやっていくのか、あとは規模感だったりとか、どこで回収するのか、そういうことも含めてプレゼンする感じです。
ー今おっしゃったみたいなことって、おそらくアーティスト活動を始めたばかりの頃には見えない部分だと思うんですが、いつぐらいから、そういうビジネス的な観点も含めて音楽に向き合うようになりましたか?
ある意味、ずっと向き合ってきた人生なんです。音楽好きじゃなきゃこの音楽業界でずっとやってきてないと思うので。ただ関わり方はパフォーマーとしてだったので、世の中に肉体表現で音楽を届けるために、演者として舞台に立つっていう立ち位置ではあったんですけど、元々僕のルーツにある音楽ってヒップホップのカルチャーで、やっぱストリートダンスが好きで、その好きが仕事になったっていう人間なので。だからソロで音楽活動を始めた時も、それが根底にあるなって自分の音楽を聴いてもすごく感じるんですよね。あとやっぱり思うのは、音楽ってその人が出ると思うんです。もちろん今は僕が作曲から全部やっているわけじゃないんですけど、例えばデモテープを聴いて、自分の直感に刺さるトラックやビートって、ある意味ちょっと偏ってたりするんですよね。でもそれが自分だと思うし、これにこうやって自分のリリックを乗せたいなとか思うのは、やっぱり自分の趣味趣向が大きく影響してるというのはあらためて感じます。そういった意味でも、今回のアルバムは自分にとって自己表現ですね。僕が音楽やるならこういう作品になりますっていうのを、わかりやすく伝えられるラインナップになってると思うので、そこは制作してみて初めて、自分が気付かされたっていうのもありました。
ー伝えたいものを伝えるときに、言葉で伝えるのと楽曲に乗せて伝えるのとでは、どういう違いがありますか?
意外と言葉で言えないことも、音楽だったら言えたりするっていうのはありますね。ちょっと熱くて照れくさくなってしまうようなワードだったりとかも、音楽に乗せたら書けちゃうというか歌えちゃうというか、そういう音楽のマジックみたいなものは、すごくあるんだなって感じてます。でもしゃべってる延長での言葉っていうのは、あんまり含みがないというか、その文面通りの意味合いで人に伝わることだと思うんです。歌って具体的な歌詞を継ぐのもいいんだけども、例えば「愛」みたいな、あえてちょっと抽象的な言葉を使うことで、いろんな形、シチュエーション、自分の生い立ちや生活環境とかで、人それぞれ感じ方が変わると思うし、そこに含みができると思うんですよね。だからダブルミーニング、トリプルミーニングぐらいのことがあっても、それが音楽の良さなのかなと思います。やっぱり音楽もある意味芸術だと思うので。だからこそ万人が聴いても、いいと思うポイントはみんなそれぞれ違ったりするので、そういうところの魅力に、僕も魅了されている一人ですね。
ー今回何曲か作詞をされてますけど、どういうシチュエーションやアプローチで行われてますか?
一曲一曲、映画の台本みたいな感じで思っていて、映画のタイトルじゃないですけど、どういうコンセプトで何を伝えたいのか、というのをまず作って、その後、とにかく自分の中で思い浮かぶ単語を書き出すんです。そうすると、なんとなく曲の輪郭が見えてきて、それをデモだったりとかトラックを聞いたとき、気持ちのいい音感というかリズムのところに、そのワードをどういうふうにはめていくかという感じで作ってますね。あと僕が思うのは、日本語を扱うじゃないですか。でも日本語ってすごくベタっとして聞こえたりするんですよね。だからそこをちょっと崩すのは意識してますね。
ーベタっとしてると伝わりにくくなってしまいますか?
僕の好みだと思います。ちょっと崩して耳馴染みを良くするというか、自分の中では違和感をなくしてるんですけど、それがもしかしたら、何言ってるか聞こえない的な違和感に繋がるかもしれないですね。僕的には、そこは狙ってやってるみたいなところもあるんですけど、あえてはっきり言ってない感じの日本語を使って、ちょっと違う言語に聞こえるみたいな、なんかそういう仕掛けは意識してますね。
ー一つ一つの曲を一度自分の中に取り込んで、それとともにアウトプットの仕方を考える感じですか?
そうですね。ただどうしても、このワードだけは絶対入れたいとかもあるので、ここちょっと耳障りがあまり良くないかもしれないけれど、この言い回しじゃないと絶対嫌だなとかもあります。その辺はレコーディングしながら調整するようにしてますね。でも、レコーディングをするようになってから、レコーディングっていう作業がいかに繊細な時間なのかっていうのを理解しました。一枚アルバムを作ってみてわかったんですが、自分の体調一つとっても喉のコンディション一つとっても息の量とか変わるし、ほんのちょっとしたことで声の成分が変わってしまうっていうのを、すごく肌で感じましたね。
ーグループでの活動と比べて、ソロでそういう経験をされた感覚や意識はかなり違いますか?
僕の場合、グループとソロでは違う職業なんで、もう何もかもが違いますね。グループではレコーディングなんてしないし。今回のソロ活動をスタートさせたことによって、パフォーマーと俳優とで“二足の草鞋”なんて言われてましたけど、三足になりましたよね。でも今の時代、別に驚くことではないし、僕はこれが普通だと思ってます。LDHファンの方って、パフォーマーとボーカルは違う職業という感じで捉えてくださってると思うので、すごい驚かせてしまったとは思いますね。もう随分前ですけど、同じグループのELLYが最初にソロデビューして、ラッパーとしてのキャリアを築いてくれたっていうのは、僕にとっては今回のソロ活動をスタートさせるにあたって、すごく背中を押してくれた大きな出来事だったし、それがなければ、もしかしたら自分がソロアーティストとしてデビューするっていう、今と同じ未来には繋がってなかったのかもしれないなと、今振り返ると感じますね。先輩にもいなかったですから。
ーELLYさんとはそういう話をされたんですか?
話してないですね(笑) 話してないんですけど、ELLYの方が大変だったと思います。いろんな風当たりとかも含めて。僕はELLYがいたからやりやすくなったっていうのは正直あると思います。別にパフォーマーのみんなが歌いたいわけじゃないと思うんですけど、俳優さんも歌う方って昔からいらっしゃるじゃないですか。自分の中では全部エンターテインメントなんですよね、歌にしてもダンスにしても芝居にしても。結局表現者として自分がどうありたいかっていうことでしかなくて、肩書だったりとかを重んじる感じって、あまり僕の思想にはないので、自然と今の自分のスタイルに変わっていきました。ただそこに対しての意見というか、何をしても新しいことを始めるときって賛否両論はあるので、そこは全部受け止めつつ自分のキャリアで証明していくしかないから、結局は自分次第かな。否定が大きくなるのか肯定が大きくなるのか、それも受け止めるつもりで始めたので。なので自分の中では、俳優さんが歌ったりすることとあんまり変わらないですね。今までグループと個人活動で二足の草鞋って言ってきましたけど、その草鞋が一足増えるっていうことで、逆にファンの皆さんと接する場所が、シンプルに1つ増えたというふうに受け止めてもらいたいなと思います。僕が何かをやり始めることで、結構グループがどうなっちゃうんだろうかとか言われるんですよ。別に僕が何かやり始めるから何かが変わるとかはないんですけどね。
ー岩田さんにとっては、踊ること、歌うこと、演じることっていうのは、別のものですが同じライン上にあるような感覚ですか?
そうですね。もちろんやってることは違いますけど、表現としての場所が違うだけで、大きく違う職業かって言われたら人前に立つっていう意味では一緒だと思うし、僕はそういうふうに感じています。あと昔からよく言ってるんですけど、一貫してブレてない軸っていうのがあって。最近は言わなくなっちゃいましたけどね、恥ずかしいんで(笑) ずっと「スーパースターになる」って言い続けてるんですよ、デビューした時からHIROさんにも。誕生日のやり取りとかでも、「早くスーパースターになってよ」みたいなことをいつもHIROさんから言われたり。まあ「(笑)」ですよ。でもHIROさんのそういう言葉って、自分の役割だったり、ビジョンだったり、会社の中での立ち位置だったりとか、そういうのも全部、ある意味そこに集約されてる気がしてて。だから「まだなれてなくてすいません」って、毎年毎年送ってるんですよね(笑) 全部の活動はそれに紐付いてます。それが自分のやり方なので、結果を出せるかどうかは正直まだわからないですけど、一回自分のやり方でやらせてもらいます、みたいな感じですね。
ー岩田さんの中での“スーパースター”の基準とは何ですか?
その人の生き様で、全ての人のモチベーションを上げられることだと思うんですよね。もちろん芸事なので、その一個一個の物事に対しての技術で人の心を動かすというか、歌だったら歌の技術で心を動かす、芝居だったら芝居の技術と作品の役への傾倒で人の心を動かす、ダンスだったらその肉体表現で人の心を動かす、それがプロフェッショナルだと思うんです。ただ僕が色々と幅広くやってる中で、そこに対してのプロセスの部分を想像させられるかどうかがすごく重要だと思っていて。長年応援してくださってるファンの皆さんは、僕がどういう思いでやってきたかという部分だったりとか、僕がどういうプロセスで今に至ってるかっていうのを知ってくださってる方も多いと思うんですけど、そこにこそエンターテインメントがあると思ってるんですよね。一般社会で言えば、30代に入って全く別の新しいことをやり始めるのは簡単ではないと思うんですけど、自分の活動を通して、何かやってみようと思ってもらえたりとか、そういう勇気とか日々のモチベーションになってくれたらいいなって。僕はめっちゃ頑張ってる人を見ると、やっぱり勇気をもらえるんですよね。だからそういうふうに、生き様として何かを伝えられるようになりたい。Michael Jacksonになれたらもちろんいいんですけど、広い意味で言うと、誰かのモチベーションになることだと思うんですよね。夢だったりとか元気を与えたりとかって結局モチベーションだと思ってて、その人の生活をちょっとでも彩ることができたりとか、少しでも背中を押すことができたりとか、たとえそれがちっぽけだったとしても、それをやり遂げたいかな。それが自分が求めるスーパースター像に近づくための、自分なりのやり方だと思って信じて進んでます。
ー一番近くにHIROさんというスーパースターがいらっしゃいます。
本当にHIROさんはスーパースターですよね。表舞台から去ってもなおスーパースター。人の付いて行き方っていうのは表舞台に立ってるときとは違うと思いますけど、僕もしかりで、これだけたくさんの人間がHIROさんに付いていきたいと思わせる人格ですよね。そういうのを見てるとやっぱり生き様だなと思うし、僕もそうありたいかな。そういう覚悟を持って始めたことなんで、もちろん責任持ってやり遂げるまで、というか責任なんてもうとっくに持ってて、全部背負うつもりでやり始めたから、あとは自分の活動、プロセスを通して、賛否の“否”を減らしていく作業ですね。今まで活動させてもらってきたグループの価値を、絶対下げない活動をしていきたいと思ってます。グループに生かされて自分がいるっていうのはよくわかってるし、こういう活動ができるのも、今までのキャリアがなければ絶対なかったことなので。20代前半の若い人がやり始めるって、ちょっとイメージできないことなんですよね、LDHでは。そういうことも全部わかったうえで、会社も許可を出してくれたっていうのもありますし。だからいろんな意味で腹くくったプロジェクトですね。
ー表舞台から退かれてもなお、エンターテインメントのトップに居続ける人ってなかなかいないですよね。
情熱を持ってやってることって、本当に人を惹きつけると思うんですよ。HIROさんも時代とともに傾ける情熱の場所は変わったと思うんですけど、今もずっとやりたいことがあり続けるっていうのは特殊な才能だと思います。
ーではアルバムについてお聞きしたいんですけど、まずソロ・ファーストアルバム『The Chocolate Box』は、ご自身のアーティスト人生の中で、どのような位置付けにするつもりで制作されましたか?
音楽って人を表すんだなって、やって感じる部分がたくさんあって、自分がソロアーティストとして世の中に表現したい音楽っていう意味でいうと、ようやく自分の名刺ができたっていうか、そういう自己紹介というか挨拶代わりの作品になったなと思っています。ファンの方、LDHファンの方だけに向けて作ったわけではなくて、世間に向けて作った感じがあるかなと。だからいろんな方の耳に届くといいなっていうのを、すごく意識して作った部分もありますね。あとはトレンドは意識してないです。本当に自分の好きなことやってるっていう感じなんで。この先も音楽は変わっていくかもしれないけど、全部好きなことだと思うんですよね、自分の。そういう意味でいうと、自分が今表現したいことを詰め込んだ一枚で、これが自分の音楽だし自分の表現ですね。
僕、ソロアーティストとしてはまだ1年生じゃないですか。でも自分の表現に対して誇りは持ってますね。嘘偽りなく作ったので、そういう意味では作品を作ったことによって、ファンの方たちにはより身近に感じてもらえると思うし、ジャケットもアートワークの部分は自分でやったり、音楽もリリック書いたり、MVも自分でロケハンに行ったりしてるぐらいだから、全体的に自分のプロデュース色が強くなったと思います。あとはライブの演出だったりグッズに関しても、自分のアイデアが盛り込まれてて、めちゃめちゃ自分のエッセンスが入ってます。結局それも含めて、失敗も成功も全部自分で背負うことだと思うし、その覚悟を持って始めたことなんで。でもこの30代のタイミングになって、やっと色々と背負えるようになったし、達成感とかも含めて、それが自分の気持ちよさに変わってきてる。重圧もあるかもしれないけど、その重圧も楽しみたいっていうか、その腹は決まってるっていう、ようやく準備ができたっていうタイミングですね。
ーアルバムジャケットをご自身の油絵で描かれてますが、最初からそういうつもりでやられたんですか?
アルバムジャケットに関しては、そのつもりで描きましたね。今回12曲制作してみて感じたのは、こんなこと言うとありきたりなんですけど、結局集約すると全部“愛” でしかないなということ。すごく普遍的なワードですけど、愛というものをジャケットに落とし込みたいなという思いがあったので。抽象画だったりとか色々イメージしたんですけど、パッと見たときに色々想像させる方が面白いなあとか、あとはやっぱりアルバムの内容とかけ離れたものにはしたくないなっていう思いで描きました。あと一人の絵描きとして自分のアイデンティティみたいなものもちゃんと表現したいなっていうのがあったので、色々踏まえてあんな感じになりました。実は色味もめちゃめちゃ何回も変えまくって、最終的にあの色になって。途中の経過も全部スマホで撮ってて、それ見ると全然違ったんだって自分でもなりますね。構図や表情一つとっても、泣いてる方がいいかな、笑ってる方がいいかな、とかそういう葛藤を繰り返して作っていきました。
ーその動画、ぜひ公開させてください。では、このアルバムタイトル『The Chocolate Box』は、どういう思いを込めて付けられたんですか?
色々考えてたんですけど、「愛」とか「LOVE」とかもいいなあとか、でもありきたりだなとか思って色々調べてみたり。あと今までの自分の半生とか、経験とか、感受性とか、色んなものを盛り込んだリリックになってるということも含めて、「自分自身」とか「人生」とか「平和」とか、なんか少し小っ恥ずかしくなっちゃうような、大きなテーマのワードがたくさん出てきて。でもちょっと待てよ、ファーストアルバムでそんなでかいこと言っちゃうとちょっと恥ずかしいぞ、みたいな自分もいて(笑) とはいえ大きくテーマを変えたくないし、好きだしなそういうテーマと思って、それを比喩で表現しようと色々調べてた時に、僕が好きな『フォレスト・ガンプ』っていう映画のワンシーンの中で「人生はチョコレートボックスのようなもの。開けてみるまでわからない」っていうセリフがあって、これだ! と思って。それで『The Chocolate Box』っていうタイトルにしたんです。アルバムの内容も、結局自分自身が今まで見てきたものじゃないですか。だから見てきたものの一つとして、その自分の頭の中に浮かんだ一本の映画から取ったんですけど、蓋を開けてみたら12曲入りで1ダースでちょうどいいじゃん、みたいな。あとチョコレートボックスって、パッケージとしてもチョコレートボックスって意味はあるんですけど、僕からのファンの皆さんへの挨拶代わりのギフトという意味でも悪くないタイトルだし、その後11月からソロ・ツアーを回らせていただくんですけど、その会場のこともボックスって言えるかなとか。だからその空間がチョコレートボックスっていうライブ空間にして、アルバムタイトルもチョコレートボックスで、全部自分の中で点が線として繋がったんですよね。すごくキャッチーでいいかなと。ジャケットと合うかなとも思ったんですが、ちょっとファンシーだけど、それはそれでいいかなという感じで。あとはLDHっぽくなさが、すごく出たんじゃないのかなと思います。
ー音楽だけじゃないものが詰まってそうなあたたかい感じですよね。
ありがとうございます。手作りなんで(笑)
ーではアルバム収録曲の中から、楽曲に込めた思いをいくつかお聞かせください。
まず1曲目の「Only One For Me」という曲なんですけど、これはもうレコーディングが終わった時に、アルバムのリード曲にしようってすぐに確信できた曲で、歌詞からトラックからすごく自分の腑に落ちたというか、このアルバムのタイトルにふさわしいテーマだなと思ってます。愛について歌ってるんですけど、自分の半生を歌っていて、かつ今まで支えてもらった全てに対して感謝してる曲で、これは絶対ファンに伝えたいメッセージだったので、これを最後の曲にするか1曲目に持ってくるかっていうのを最後まで悩んだ楽曲です。この曲はMVも撮ったんですけど、今回のアルバムを象徴する曲になったかなと思ってます。だからファンの皆さんにたくさん聞いてもらいたい曲ですね。
ーリード曲が最初に決まるというのは、アルバム制作においては幸運なことですね。
そうですね。次は、もう解禁されてる「Ready?」という2曲目に入ってる楽曲で、これはコンセプトもはっきりしてて、ドライブしてるときに気持ちよくかけて、チル、リラックスできる、そういうシティポップみたいなことをやりたいなっていうのが、このトラックでハマったんで、歌詞の中にも車のパーツだったりとかを散りばめたり、道を人生に例えて、それを車のハンドルを握って進んで行く様っていうのを、前向きなメッセージとして発信できたらなっていう思いで書かせてもらいました。これは曲を聴いてすぐに、ライブパフォーマンスで歌って踊るっていうところを全面に打ち出せる楽曲ができたなと思ったので、ツアーを楽しみにしてくださってる方には、色々妄想していただける楽曲になったなと思ってます。
ーライブでのパフォーマンスが楽しみな楽曲です。その他、面白いエピソードや思い入れなどはありますか?
6曲目に入ってる「Monday」なんですけど、これはちょっとお茶目な曲を作りたくて、正直二日酔いの曲なんです(笑) こんなこと言うと聴こえ方が変わっちゃいそうなんだけど、めちゃめちゃ二日酔いになったときの自分だったりいろんな要素があって、ちょっとエロもあったり、アメリカの映画とかで、破天荒な女の子に振り回されまくる男みたいな、昔の映画で言うと『メリーに首ったけ』とかそういう感じで作ったんですよ。すごく抽象的なんですけど、ちょっとお茶目だけど大人な感じで、かつ軽快な曲みたいなものを作りたくて。ただ歌詞だけ見るとそんな感じでもなくシンプルにラブソングだと思ってくれてもいいんですけど、でも僕の中ではめっちゃ二日酔いで、夢とか言ったけど、夢っていうよりかもう二日酔いで具合悪いみたいな(笑) そういうちょっと遊びのある曲ですね。
7曲目の「Can’t Get Enough」は、トラック聴いてすぐ、ライブパフォーマンスをこの曲でやりたいなと思って、そこに対して歌詞をはめていったんです。最初なんか熱いラブソングにしようかなとか思ったんですけど、書いていくうちにどんどんラブソングじゃなくなっていて、なんか今の自分のモチベーションというか、ふつふつと燃え上がる闘志みたいなのが出てきちゃったから、そのまんま歌ったら応援ソングになりました。とにかく残された時間ねぇぞ、みたいなこと結構言ってるんですよ僕。自分に言い聞かせてるからだと思うんですけど。とにかく命燃やして今しかないぞ、ということを歌ってますね。あと生きてると色んな雑音が今は入ってきやすい時代だからこそ、本質をしっかりと見極めて生きていけっていうことを、自分にも言い聞かせてる曲です。これは本当に僕が思ってることなので。自分の目の前に見える景色の中で、何がリアルで何がフェイクなのかっていうのを自分で判断してくださいっていう感じで、それが実はメッセージに入ってます。
あと9曲目の「The Way」は、自分で歌詞を書こうかなと思ったんですけど、「The Way」のチームってデビューシングルの「korekara」を作ってくれたチームと一緒で、あまりにもデモで上がってきた歌詞が良すぎて、これで行こう! ってなったんです。これは自分だって思えちゃって、自分の中で。「The Way」って道のことですけど、人生のことを言ってて、すごい詩的な表現だったりとか、なかなか自分では出てこないワードだったりとか、やっぱりさすがだなと思って。あと曲調的には、ライブをイメージしたときにアップテンポなものがこのアルバムの中に必要だなっていうのは自分の中で考えてたので、その中の一曲として、ちょっとテイスト違うんですけどトロピカルハウスっぽい、アップテンポかつ抜けのある爽快な楽曲になってるので、パッとライブシーンが明るくなるような演出とともに表現したらすごくいいのかなっていうのを想像してます。この後半に入ってるアップテンポなナンバーは、かなりライブをイメージしてやってるので、会場に来ていただいた皆さんと、より距離が近く一緒になれるようなイメージで作りましたね。
ー最後の3曲が既存曲で、ラストがソロデビュー曲の「korekara」となっています。
自分の最初に発表した楽曲ということもあって、最後の楽曲としてアルバムの締めに相応しいかなという思いと、ファンの皆さんにはそのエモさを楽しんでもらいたいなと思って最後に持ってきました。「korekara」は、これから先の自分の活動も楽しみにしてもらいたいっていうタイトルに込められたメッセージでもあります。本当に全曲通して統一感のあるラインナップになってると思うので、『The Chocolate Box』っていう一つの作品として届けたい感じになりましたね。自分の世界観が隅々まで行きわたったすごくいいアルバムになりました。
ー最後に、ソロプロジェクト「Be My guest」について、きっかけ、目的、タイトルの意味、今後の活動予定などを教えてください。
「Be My guest」はおもてなしという意味を込めてるんですけど、自分のプロジェクトを始める時に、パッと浮かんだワードだったんですよね。ファンの方々に対して、三代目 J SOUL BROTHERSが10周年を迎えたタイミングで立ち上げたプロジェクトだったんで、その目的としては、より身近な空間を作って感謝の気持ちを伝えたいというのがありました。そういうメッセージを端的に表現したワードで、かつ語呂がいい、みたいなことを想像した時に「Be My guest」ってすごくしっくりきたので。あと「Be My guest」ってすごく言いやすいんですよね。それで一回自分で文字に起こして描いてたら、なんか意外といい感じに描けたから、あの文字も自分が描いてるんですけど、これこのままもうロゴでいいんじゃない? と思ってそのままロゴで使ってます(笑) 発端はそんな感じですね。
それで「Be My guest」というプロジェクトで何をやるのかっていうことなんですけど、音楽活動だけじゃないんですよね、これって。この先自分が関わる全てのプロジェクトに「Be My guest」の冠が付いていいと思ってます。自分の興味があること、音楽もそうだし、ダンスもそうだし、絵画もそうだし、あと俳優もそうかもしれない。「Be My guest」という、何でも自分の表現ができる居場所を作ったことによって、そこにファンの方々が集えば、そこでエチュードとかやっても面白いと思います。音楽活動=「Be My guest」って思われてる皆さんも多いと思うんですけど、今後新たに挑戦するものが「Be My guest」ってタイトルかもしれない。自分のこの先のキャリアの一つのテーマとして、それは恩返しの意味だったりもするし、おもてなしの意味っていうのもあるので、僕がホストで皆さんがゲストですよ、という場所を作らせてもらいました。
ー「Be My guest」のウェブサイトを見た時、今後そこにメタバース空間ができて、岩田さんの色んな活動とリンクしたら、すごく面白い空間が広がるのではないかと勝手に想像してしまいました。
ありがとうございます。確かにそうですね。この先の展望としては、もっともっと色んなアイデアが生まれたら、そこでチャレンジしていくと思います。なので最初に申し上げたように、僕はあんまり枠とかにとらわれない思想の中でやってきたので、いきなり変なことやるかもしれないですけど、そういうサプライズも含めて、皆さんにとってのエンターテインメントになってくれたらいいなと思ってるので、あたたかく見守っていただけたら嬉しいです。
*このインタビューは2022年9月30日に発売されたVI/NYL #009のために実施されました。